新聞の記事に、「五重塔の謎」という興味深いコラムがあった。


日本には現存する五重塔は22本あり、最古のものは奈良の法隆寺の五重塔。
歴史をひもといても、1000年以上、地震で倒れた記録はないそうだ。大震災などで現代建築で建てられた建造物が倒壊してしまったことを考えると驚嘆に値する。


一般的に地震の揺れに対する工夫は、柱を太くして頑丈にする「剛構造」と、
木材などの軟らかい素材で組み立て、地震の力を受け流す「柔構造」とがあるらしく、
五重塔は後者の仕組みで建てられているそうだ。


専門家が耐震構造の研究のため、五重塔の構造について調べているそうだが、
これだけ発達した科学をもってしても、
これだけ長きに渡って倒れない秘密を解明できていないそうだ。
説として有力なのは、塔のてっぺんに着けられた「相輪」と呼ばれる装飾品が、塔本体とは別の揺れ方をして全体としての揺れを相殺しているのでは?ということと、
塔の中心にある「心柱」という太い柱も同様の貢献をしているらしい?ということだそうだ。


その他、建材同士を独特の方式で組み合わせてある構造にも効果があるらしい。
地震の揺れでわざとある程度塔が傾いたり、建材が滑ったりして摩擦が生じ、揺れのエネルギーを吸収するらしいことも分かりつつあるようだ。

いわば、ある程度「不安定に揺れる」ことが「安定」につながる、ということだろう。


私もトレーナーとして身体づくりに携わる中で、
いわゆる「ボディバランス」を考えることは多い。
バランスを崩さない身体、と言うと、
すぐ「体幹をしっかり鍛えて崩れない身体を」となるが、
実は五重塔と同様、固めてしまうことはマイナスになることが多い、と私はかなり以前から考えて、訴えている。


筋力を鍛える必要がない、ということではなく、その筋力は「固めて動かないようにするため」に必要なのではなく、
「微妙に揺れて、揺れを戻すのに必要」と考えるべきと認識している。


要は、付けた筋力をどう使うか?が重要であり、そのような観点が必要ということである。



それにしても、現代の科学をもってしても解明が難しいとは、昔の人たちの思考や発想の拠り所は何だったのだろう…


当時の大工さんたちが構造計算をして、意図的に地震に強い構造で建てたとは考えにくいそうで、先人の知恵にはただ驚くばかりである。