トレーナーとして、競技選手や一般の方、
どちらかというと1on1か、それに近い状態での指導などが多いため、
現在ではフィットネスクラブなどで指導することはほとんどない。
とは言うものの、スタッフ育成や教育などの仕事依頼でフィットネス業界に関わることも多いのも事実。
だが、それとてスポット的な関わりであるため、
フィットネス業界で20年近く仕事もしてきたが、最近では業界の細かい事情や近況に対する意識が少なかった。
そんなわけで、「これではいけない」と思い、
専門webサイトで最近のニュースなどを検索してみた。
特に会員向けに提供されているプログラムなどについて。
調べてみると、私が業界に深く関わっていた頃と比べると、プログラムが本当に多様化している。
ヨーガやピラティス(ま、ヨーガみたいなもんです)の類のモノもあれば、様々な用具を用いたもの。
一昔前に「ステップ」(今でもあります)という台を使って行うエクササイズが大人気だったが、
そのアレンジとして台がスプリングで不安定になっており、その上でバランストレーニングを兼ねたものだったり、
その台も形や大きさが様々に変化していたり、
エアロビクスのようなモノにEMS(通販で流行った電気刺激でトレーニングするヤツ)を組合わせたり、
などなど…
その他にも、名前を見ただけでは何に使うんだか分からないような、色々な器具や機械が生み出されているようだ。
確かに、これらのツールは、
移り気やすい一般の人たちの興味を繋ぎとめるためには必要なものであるのだろう。
業界の方々や指導者の皆さんの苦労もよく分かる。
だが…
これは理想論かも知れないが…
実はトレーニング施設で、最も優れているのは、
「何も無いフロア」である。
モノと言うのは便利だが、
モノがあると行うモノがほぼ限定される。
言い換えれば出来るものに「制約」が出来るのである。
そのモノが増えれば増えるほど、指導者の側からすると、その分「制約」が増えることにもなるのだ。
例えは不適切かも知れないが、
場合によっては用具(モノ)というのは“麻薬”みたいなもので、使うと楽な場合も多い。
だがそれに慣れると、モノが無いと指導が出来なくなる。それ無しでは不安になる。決まったことしか出来なくなる…
これは運動指導者としては、極めて深刻な状態なのである。
フィットネスクラブのように大人数を一度に相手にするような形態では、ある意味では仕方がない事だ。
私も用具を否定しているわけではない。便利な道具は使うに越したことは無い。
だが指導者は上記のことを意識し、理解しておくことが大切なのである。
頭の中は常にゼロベースにし、
自分がしたい事をもし何もないフロアでやろうとしたらどうすれば良いのか?を考え、
それを実施するのに道具があると楽に効率的に出来る、という順序で考える習慣が大事だ。
“まずはモノありき”、では真の実力は見に付かない。
生涯自分のクラブが存続し、自分も永遠にそこで働ければ良いが、必ずそうでいられる保証はない。
一人で外部に出向いて指導をしなければならない環境に、いつなるかも知れない。
“モノがあると楽”から、“モノがないと出来ない”に知らずのうちになっていないか?
“モノがあると制約が増える”という視点に立つと、
様々なものが見えてくる。
物事、表があれば裏もある。全て良いことばかりではない。
メリットがあれば、必ず裏にはリスクもある。
成長とは、「現状の“何か”を捨てることから始まる」。と説く某有名ビジネスコンサルタントの人がいたが、
まさに言い得て妙、と言えよう。
やや言葉遊びのようだが、
「スキルアップ」と「成長」は同じように聞こえて、本質は違うのかも知れない。
厳しく言えば、小手先のスキルアップを「成長」と勘違いすると、悲惨なことになる危険もある。