夕刊フジBLOG より。


この類いのテーマは以前から書こうと思っていたので。
まずは引用が長くなりますが。


<b>高血圧は薬で下げるな</b>

【サラリーマンを襲う病気】

 秋の健診シーズン到来。高血圧を指摘され、降圧剤を飲むべきか飲まざるべきか、不安を抱えて迷っている人も多いのでないか。そんな中、(角川ONEテーマ21)という本が話題になっている。著者は薬害や医療過誤などの問題を追及するNPO法人・医薬ビジランスセンター(大阪市)の浜六郎医師。現代の高血圧治療の何が問題なのか。(2005.09.15掲載)

★飲まなくてもいい人まで薬が処方されている
 浜医師が特に問題と指摘するのは以下の3点だ。
(1)高血圧とされる基準値が低く設定されすぎている。そのため、飲まなくてもいい人にまで降圧剤が処方されている。
(2)降圧剤の副作用の問題が軽視されている。ある程度の高血圧であっても、薬を使わないほうが長生きできるという数々のデータがある。特に高齢者は基準値よりかなり高めでも降圧剤は必要ない。
(3)どうしても必要な場合でも、より安全な薬から使用するべき。ところが、現在は安くて安全な薬に代り、高くて危険、あるいは長期の安全性のあやしい新薬が主流になっている。
 では、これらの問題点をくわしく見ていこう。

★5000万人の「高血圧患者」はホントか
 高血圧の基準値は、2000年、04年と相次いで改訂され、そのたびに低く引き下げられてきた。
 「それまでは、上160-下95以上を高血圧としていたのが、2000年の改訂で、140-90に引き下げられました。目標値は130-85とさらに低く、この基準を当てはめて計算すると、日本になんと5000万人もの高血圧患者がいることになります」(浜医師)
 そして、これらの人々に降圧剤が処方されようとしている。はたして、その降圧剤は必要なのか。そもそも基準値はどんな根拠で引き下げられたのか。
 「新基準値の根拠となった調査をHOT研究といいます。ところが、この調査で血圧を低く保つことで効果があったのは、多くの病気がある中で心筋梗塞だけなのです」
 心筋梗塞が減ればいいではないか、と考えがちだがそうではない。この数字はあくまで心筋梗塞になるのであって、心筋梗塞による死亡ではない。何より大事な死亡率全体で見ると、血圧を低くしすぎるよりも、むしろより緩やかにコントロールした方が、死亡率全体は低くなっているというのだ。
 さらに、2000年基準では別枠で考えられていた高齢者に対しても、04年の改正で、ほぼ一律に、若者と同じ基準値を適用しようとしている。このことは非常に問題だ、と浜医師は指摘する。

★降圧剤を使わないほうが長生きする
 浜医師は、血圧がある程度高めでも、降圧剤を使うよりは、むしろ使わないほうが長生きである、という数々の調査結果を示している。
 「中でも、NIPPON研究という調査では、人の助けを借りずに自分の身の回りのことができる人を自立者としてカウントしていますが、どの血圧値であっても、降圧剤を服用するよりは、降圧剤を使わないほうが自立者の割合は高かった」
 特に高齢になると体の隅々に栄養を届けるためにある程度血圧が上がるのは自然の現象だ。それを薬で無理に下げるために、自立率が下がるのではないかと浜医師は推測する。
 「60歳以上はもちろん、60歳以下でも降圧剤の副作用を考えると、上180-下100までは無治療でよいでしょう」と浜医師はいう。むしろ血圧の上がる原因を見直し、それを解決する努力こそが必要だとも浜医師は警告する。

★がん発生を高める危険がある
 「降圧剤の服用でもっとも問題とされるのは、日本で使われることの一番多い『カルシウム拮抗剤』という薬です。この薬は細胞の働きを抑え、血管を弛緩させて血圧を下げる薬です。ところが、この薬にはがんの発生を高める危険があるのです」
 薬が血管細胞だけでなく、免疫細胞の働きも鈍らせ、がんや感染症などが増加するのではないかというのだ。また、ある種の薬には突然死の増加も懸念されている。
 「昔から使われて効果も確かめられ、しかも安価な利尿剤などの降圧剤に代って、危険だったり効果が未知数だったりする新薬が主流になりつつあることも問題です。降圧剤を使う場合でもより安全な薬から選ぶべきです」と浜医師。
 これからは高血圧治療の問題は医者任せにせず、自分でよく知識を身に付けて判断した方がよさそうなのだ。
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●はま・ろくろう
 1945年徳島県生まれ。大阪大医学部卒業後、大阪府衛生部を経て阪南中央病院に勤務。現在、NPO法人・医薬ビジランスセンター代表。



このような「検査数値の判断の違い」については以前から言われていたが、
ここ最近、様々なメディアで取り上げられることが多くなった。
血圧のみならず、他のことでも同様の事が。



コレステロールも「高いのが悪」と言われてきたが、
最近では低すぎるよりは、基準よりも高めの方が良い、とか。


「肥満が悪」と言われてきたが、
痩せよりは、むしろ少し体脂肪多めのほうが免疫力が高い、とか。


血糖値なども、同じような事が言われている。




もちろん、何でも「高すぎる」ことが良くないのは言うまでも無いが、
本来、様々な検査数値の「正常範囲」とされているのは、“平均値”からの割り出しであって、
必ずしもそこから外れているから、即“悪”ではないのかも知れない。


別の観点から考えると、
そもそも数値が上昇するのは、“必要があるから身体が反応している”とも考えられ、
ある種の「生命維持自動制御機構」とも考えられるのかも知れない。
(と、私は考えている)


例えば、今回の「高血圧」。


そもそも「血圧」とは文字通り、血管の壁に掛かる圧力の事である。
当然の事ながら、心臓は全身に血液を送らなければならないから、
大きな圧力で「ブシュッ!」と心臓を強力に収縮させて血液を噴出する。
となると、血圧が高くなるのは次の3種に分類される。


1.「血液の粘性(粘り具合)が高くなった」
2.「血液量(水分量)が増えた」
3.「血管自体が細くなった(壁に老廃物が蓄積も含む)」


いずれにしろ身体に何か問題が生じていることは疑う必要はあるのだろうが、
当然、そこには「個人差」(血管が細い、硬いなど)もあるはずだし、
そこから派生する「個人の数値的な許容範囲」もあるはずである。


つまり平均値から血圧が高いのは、
そのぐらい圧力を上げないと全身に血液を送れないと、
「生命維持自動制御機構」が判断し、その数値に設定したと考えられる。
つまり「生きるために」その人の身体に最も適切に調節した、と言える。
それを、平均値から外れているからと言って、むやみに薬で下げてしまったら、
その方が問題と考えるのは、ある意味常識的な考え方だ。


誤解の無いように言っておくが、
「高くても良い」という事を論じているのではなく、
身体が様々な数値を上げたり下げたりするのも、
「必要があって、身体がそうしている」という側面もあるのだろう、ということだ。


これは、「下痢」や「せき」「くしゃみ」も同じだろう。
体内の何らかの異物を体外に排出しようとしている、身体の反応だ。
「発熱」も同じと考えられる。
もちろん長期間続くと体力の消耗が激しいのでコントロールが必要なケースもあろうが、
むやみに止めたり下げたりするのは、身体の「生命維持自動制御機構」を混乱させることにもなるのかも知れない。
少なくとも、そういう考え方も頭の片隅に置いておくことが賢明なのだろう。


全てが「悪」と決め付けてきたことに、疑問が生じているのが昨今の状況のようだ。
以前に「身体をパーツごとに捉えない」という主旨のことを書いたが 、数値の大小だけで、すぐに善悪を決定してしまうこと自体が、
もしかすると非論理的なのかも知れない。


“人体はまだまだ神秘に満ちている”と思う反面、
“実に人体はうまく出来ている”と、驚嘆と共に感謝をするのであった。