前回は
「“アスレティックトレーナー”というモノがアメリカからの情報によって認知されるようになり、
日本でも“アメリカのように確立されたトレーナーを目指そう”となっている状況にも関わらず、
尚且つ、“日本独自規格トレーナー”が未だに求められている」
という現状で結んだ。


これについての続きを。

 



いわゆる「スポーツトレーナー(アスレティックトレーナーも含んで)」
を求める団体・個人は様々である。
プロスポーツ(野球、サッカー、テニス、ゴルフ、カーレース、騎手、競輪選手、などなど)、
アマチュア企業スポーツ、大学スポーツ、高校スポーツ、…
昨今は、情報が定着化してきた事もあり、
明確に「アスレティックトレーナーを求む」と提示する場合も多くなって来たが、
現実は、要望は多種多様である。
(「アスレティックトレーナー」の定義については、こちらをどうぞ。)

 



例えば、「鍼灸師のトレーナーを求む」とか。
この場合、「トレーナー」という部分はさほど重要ではなく、
要は「帯同してくれる施術師(治療家)」を望んでいる、という意味だ。
「トレーナー」の部分は、少しスポーツのことを分かっていてくれれば良い、という程度。
そういう人(団体)にとっては、
アメリカのトレーナー資格を持っていようが、日本体育協会のAT(アスレティックトレーナー)
の資格を持っていようが、どうでも良い、という事になる。
(ただし最近は、競技団体によっては、ナショナルチームのトレーナーは
 日本体育協会のATでなければ登録出来ない、となった競技団体も出て来ている。)

 



逆に、人(団体)によっては、「鍼」というものに拒絶反応があり、
鍼以外の施術師(治療家)の“トレーナー”(この場合も“トレーナー”はさして重要ではない)
を求めている場合もある。
または、昔ながらに「マッサージに精通した“トレーナー”」と求めている事も多い。
要は「疲労だけ除去してくれれば良い。その代わり“その道の真のプロ”」というオーダーであったり。

 



欧米の場合は、「医療」(施術行為も含む)と言えば、
そのほとんどは医師などの「メディカルスタッフ」の分野になるが、
日本の場合は「アスレティックトレーナー」と「医師」の間を埋める、
様々な療術師(施術師、治療家)が存在するという現状が、
日本独自の規格における「トレーナー」を存在させているのである。

 



実は、この「施術」という分野のみならず、
他にも様々なオーダーが、実際の現場からは上がってくる。
一つの例が、「身体の効率的な使い方、力の発揮の仕方を指導してくれる“トレーナー”」など。
(実は、私に来る「オーダー」の一つの事例です。)


要するに、フィジカルトレーニング(ウェイトトレーニングなど)によって得た筋力・持久力を、
無駄なく、効率よくパフォーマンスとして発揮させたい、といった要望である。
まあ、この仕事が「トレーナー」なのか?という議論もあるが、
実際には、ボクシングの「トレーナー」と呼ばれる人達は「コーチ」なので、
その概念に近いのかも知れない。
そう考えると、「トレーナー」というものの位置付け自体が非常に曖昧になってくるが…。

 



このような役割を担う人が、欧米ではどのように呼ばれるのかは分からないが、
(恐らく「ストレングスコーチ」という、フィジカルトレーニングの一つにカテゴライズされるのだろう)
ある意味では、日本独特のものなのかも知れない。

 



読売ジャイアンツの桑田投手が、数年前に好成績を挙げ、「復活!」と騒がれた時、
その身体操作法を伝授し、手助けしたのが、武術家の甲野善紀先生であった事は有名な話である。
この場合は、甲野先生が「武術家」であったので「トレーナー」とは呼ばれなかったが、
あれが武術家でなくて、ジャージ姿の体育大卒の人だったら、
全く同じ内容の指導をしても、恐らく「トレーナー」と呼ばれていただろう。

 



私はこの日本を、「宝の山」と評しているほど、
東洋文化に根付いた、様々な概念が存在している素晴らしい文化を持った国だと思う。
それであるが故に、
良いか悪いかは別にして、身体に関しても様々な概念・価値観が存在するため、
「スポーツトレーナー」という分野に於いて、“日本独自規格”が脈々と続いているのであろう。

 




もちろん、まだまだ続きます。