読者の方から、こんなコメントをいただいた。
「スポーツトレーナーになるにはどうしたら良いか?」
そう言えば、「スポーツトレーナー~」という表題を掲げていながら、
この命題について書いてこなかったな、と改めて気付いた。
書くつもりではいたのだが、
トレーナーになるには、今の日本においては色々な方法があり、
また色々な考え方がある。
その為、主流となる考え方と、私のように個人の考え方があり、
方法論は千差万別なので、
かなり複雑な為、少々躊躇していたのも事実。
まあ、いつまでも面倒がっても何なので、
あくまでも個人の見解も含む、という前提を容赦いただき、
ちょっと書いてみることにする。
長くなる恐れがあるので、数回に渡るかも。
説明が足らなかったり、異論のある方は、
是非コメントで指摘していただきたい。
さて、ご質問をいただいた方の「トレーナーになるには?」という事に関連して、
まず、「トレーナー」とは何か?という点を解説する必要がある。
それによって答えが変わってくる為である。
一口にトレーナーと言っても、
アメリカと日本では、厳密に言うと現状はやや異なる。
①アメリカで「トレーナー」と言えば、ほとんどは「アスレティックトレーナー」を指す。
アスレティックトレーナーとは、
アメリカで最も権威のある団体である「NATA」National Athletic Trainers' Association(全米アスレティック・トレーナーズ協会)
では次のように定義されている。
<ケガの予防>
☆ シーズン中前後のコンディショニング・プログラムを作成、実施
☆ テーピングの技術、サポーターの的確な選択
☆ 競技場の点検<応急処置>
☆擦り傷の手当てから緊急事態までの対処方法
ケガの評価/マネージメント
◎以下のような順序でケガの評価をし、競技への参加/不参加を決定します
☆ 問診:ケガのメカニズム(いつ、どこで、どのように起こったのか)、痛みの種類、ケガの履歴などを問診。
☆ 視診:歩行パターン、変形、変色、腫脹など。
☆ 触診:変形、変温など。
☆ テスト法:筋力、関節の可動域、関節の緩みなどを検査する。
◎以上の結果を元にケガのマネージメントプランを立てます。
☆ ストレッチ
☆ 物理療法(冷却療法、温熱療法、電気療法、超音波療法など)
☆ エクササイズ(リハビリテーション)<アスレティック・リハビリテーション>
―メディカル(医療)リハビリテーションとの違い―生活水準を「0」と考えた時、ケガなどで普段の生活に支障をきたすことを「-(マイナス)」、スポーツ選手のように人並み以上のパフォーマンスが出来ることを「+(プラス)」と考えたとします。
メディカル・リハビリテーションは「-」を「0」に、アスレティック・リハビリテーションはさらに「+」に戻すことを意味します。
☆ 競技復帰までの見通しを立て、プログラムを作成し、実行する。
☆ 物理療法の適切な使用
☆ リハビリテーションに使用する器具の選択と点検<トレーニング・ルームの管理と運営>
☆ 緊急事態の応急処置法、役割分担などを書類にし、いつでも実行できる体勢をとっておく。<教育とカウンセリング>
☆ 選手と過去のケガの原因など再確認を行い、今後安全に競技が行えるようにカウンセリングを行う。
☆ 必要であれば、選手を専門家に紹介する。
☆ 選手だけでなく関係者全員をスポーツ障害について教育する。
資格としては、前述の「NATA」のATC(Athletic Trainer, Certified)
という資格があるが、
当然アメリカの大学にて勉強しなければならず、かなりの難関である事は事実。
アメリカの資格なので、法的には日本では効力は無いが、
カリキュラムの充実度と権威・能力から、日本でもステータスは高い。
詳しくはこちらやこちらが参考になると思われる。日本でも同様の資格を、という事で、
日本体育協会で公認トレーナー(日体協AT)という認定が行われている。
完成度はこれからであるが、近年、需要が高まりつつある。
いわゆる「ストレングスコーチ」とは、主にウェイトトレーニングを中心に指導する仕事で、
日本では「トレーニングコーチ」と呼んだり、この仕事を「トレーナー」と呼んだり、
呼称はかなり曖昧になっている。
②または、「パーソナルトレーナー」と言って、個人のクライアントと時間単位、あるいは長期の契約を結び
マンツーマンで指導を担当するものがある。
このblogでも度々、解説している。
多くの場合は、体づくりやダイエット、疾病予防が中心となる。
広義のカテゴリーとしては「フィットネストレーナー」に入るだろう。
フィットネスクラブでスタッフとして勤務する人達も、ここに入る。
資格としては、やはりアメリカの資格で、
NSCAという団体で「CPT」(Certified Personal Trainer)や、
「CSCS」(Certified Strength and Conditioning Specialist)などがあり、日本国内で日本語で試験が行われている。
その他、国内でも様々な資格がある。
(ここでは「トレーナー」として大きく二つに分けたが、
現場ではもっと細分化していることもあるかも知れないし、
これからも多用化していく可能性もあるだろう。)
ただ、①も②もそうだが、
「資格」で仕事をする訳ではないので、最終的には「その個人が何が出来るか?」
という事にはなるが、
第三者が客観的に能力を判断する指標となるため、資格はあるに越した事はない。
上記では、この分野では先進国である主にアメリカをベースに説明したが、
ところが日本の場合は若干、事情が異なる。
②の方はほとんど一致する仕事内容だが、
問題は①の部分だ。
いや、正確に言うと「アスレティックトレーナー」という仕事としては
その内容は同じなのだが、
それ以外に競技に関わる「トレーナー」として、様々な形態が存在する実態がある。
これは日本における「トレーナー」の発生形態が特殊な経緯をたどったことに起因している。
ここまででかなり長くなってしまったので、
続きはまた。
このテーマについては、新たに別カテゴリーを設定しました。