なかなか時間が無くて、
この件についてのエントリーが遅くなってしまって…。


以前にこちらこちらのエントリーで、
女子バレーチームの事や、柳本監督の事を書かせていただいた。
実は、その記事を読んだ読者の方からメールをいただいた。
仮に「Aさん」としておこう。

「日本のスポーツ団体(協会)の対応などについて、
トレーナーという立場で意見を聞かせて欲しい」

との内容であった。


そのAさんからのメールで、題材としていただいた文章。
ある本の内容を読んでの感想を交えた内容である。
(Aさんが読まれたのは、吉井妙子さん著の「100%の闘争心」という本。
 女子バレーボールチームがアテネオリンピック出場を決めてから
 五輪本番までの内幕を書いてある。)


身長180センチ超の選手たちは、アテネまでの移動を(オリンピックに限らず全ての大会で)
飛行機のエコノミーを利用。
因みに普通身長の役員は全員ビジネスクラス。
二つ。
全日本選手に選ばれた選手への日当は2000円。
媒体露出の報酬は全て協会に入り、選手への還元は無し。
まあ百歩譲ってそこまでは良くある話と目を瞑っても、
それは無いだろうと憤りを感じたのが、スポーツトレーナーの件だったのです。

スタッフの中には選手12名に対しスポーツトレーナーが2名。
そのトレーナーがオリンピック村に入るためのパスが暫定のものだったため、
入村時間を制限され、選手たちは体のケアも満足に出来ず、
挙句は吉井氏の紹介で松坂投手の専属の鴻江トレーナーにボランティア(無報酬)で
治療を施してもらった、というものです。

~中略~

本人たち(協会の方の事)は経営改革をしているつもりのようなのですが、
現在行われているVリーグのチケット代金を、国内試合にも拘らず5、6000円に設定して、
ファンからかえって敬遠されて会場はガラガラ状態という現状。(安い2階席から埋まっていく)
嘆かわしいです、一言で言うと。




と、かなり思いの丈を綴られた内容であった。


つまり、Aさんがおっしゃりたいのは、
「優先順位、違うだろ!強くする気あんのか!」
ということだと思う。


正直言うと、私も現場に関わる身で、
顔も名前も晒している立場で言い難いことも多いが、
トレーナーとしての立場でも、Aさんと同様に思います。


特に上の方々は“お役人”のような感覚の持ち主が多いので、
どうしても「この場面では、何が最も重要か?」という観点が完全に抜け落ちる傾向にある。
そもそも、この場合、スタッフの不手際であって、
そのしわ寄せが選手に来るのは、懲罰モノである。
一般企業ならば、減棒。
最悪、左遷。
しかし前述の通り、「お役所」のような感覚なので、
もたれ合ってかばい合って、恐らくそうはならない。



これも以前のエントリーで書いた通り、
私もむか~し昔、バレーボールに関わっていた時期があったが、
実はこの現状でも、かなり改善されているのである。
特に、選手の待遇に関しては。
ただ確かに、Aさんが感じられるように、まだまだ改善の余地はある。


私が思うに、改善策は二つしかないと思う。
①外部の目。つまり第3者が状況を見守る、いわば“監視機構”を持つ。
 野球で言う”コミッショナー”のような。
 (最も、野球の場合は全く機能していないが…)
 現状での日本の組織でやるとなると、文部科学省になるのだろうか?
②協会自らが“経営”という観点を持ち、外部の“経営コンサルタント”の
ような人物や組織を介入させて、“利益の出る”組織を目指す。
 (利益とは、“金銭が儲かる”ということのみならず、
  目的は“強くなる”ことな訳で、その為の有効な金銭の使い道や、ファン
からどのようにお金を頂き、還元するか、という事など全て含む。)


言える事は、

「人は権力を持つと、“おかしい”と感じていた事が感じなくなり、
 その立場に長くいるほど、二乗のスピードで感覚が麻痺していく」
「誰も見ていなければ“まあ良いか”になり、自分ではほとんど改善出来な
い」
 
であろうと思う。


ちなみに、トレーナーの立場でもう少し言わせて頂くと…


文中に「全日本選手に選ばれた選手への日当は2000円」とあったが、プロスポーツは別だが、アマチュアスポーツの場合、
世界大会でのトレーナーの日当は…

「似たり寄ったり」、です。
金額ははっきり言えませんが。
私も様々な競技に知り合いのトレーナーがいるが、
話していると「こっちの方が安い!」「いや俺の方が!」
などと、変な競い合いになる。


だが、申し訳ないが選手はまだ良い。
社員として、一応給料が入って来るし、
成績出せば報奨金も出るし。
トレーナーも、どこかの会社からの派遣ならば良いが、
もし個人だったら、仮に「五輪のトレーナーで行ってくれ」と言われても、
その間、日本で収入が稼げず、僅かばかりの日当ではとても食って行けない。


つまり日本のトレーナーの場合(アマチュアスポーツ)、
世界大会などに帯同していけるのは、
①トレーナー派遣会社からの派遣。
②自分で何人かのスタッフを抱え、自分が日本にいなくても稼いでくれる人が
いる。(治療院を持っている、など)
③スポンサーがいる。(日本では少ない)
に限られるのである。


別に「まずトレーナーの待遇を考えろ!」とは言わないが、
この辺りも含めて、日本のスポーツをより強くするには
どのように金銭を集め、どう使うべきか、
「経営」という観点で全体を再構築すべきであるとは思う。


企業が「株主・社員・ユーザー」の三方が喜べる事を考えるのが義務であるように、
スポーツは「選手・国民・スタッフ」が皆喜べる仕組みづくりであろう。