こちらのエントリーの続き。


読売新聞の記事(2004.12月24日)を、
分かり易くする為分割し、一部割愛したり、
途中に注釈を入れてある点をご了承いただきたい。
(表現が、多少難解な面がある為)


アテネ五輪から3週間以上たった9月23日、衝撃的事実が発表された。五輪の自転車タイムトライアルで優勝したタイラー・ハミルトン(米)が、Aサンプル分析で血液ドーピングに陽性となりながら、メダルはく奪処分を免れたのだ。“汚れた金メダル”を許した背景には、新検査の土壇場の導入で、検査側の不手際が重なった事情があった。

ハミルトンの競技は8月18日。翌日採取された血液は、血液ドーピングの陽性結果を示していた。ところがここで、分析機関(コスタス・ヨルガコプロス所長)は最初のミスを犯す。22日の国際オリンピック委員会(IOC)への報告は、「陰性、ただし血液ドーピングの疑いあり」。この微妙な言い回しは、同所長によると、新検査の土壇場の導入で、分析班の能力が100%確実ではないと感じたためだった。IOCのシャマシュ医事局長は、これを上に報告もせず、シロとして処理してしまった。



ちなみに、血液ドーピングとは…。

<血液ドーピング>
 血液ドーピング 競技前に他人の血液を自分に注射し、酸素を運ぶ赤血球数を増やして、持久力を高める方法で、禁止される手法の一つ。自分の血液を保存・再注射するやり方もあるが、選手の体への負担が大きい。1980年代、同じ効果を持ちながら健康リスクの少ない、禁止薬物エリスロポエチン(EPO)の使用が一般的になり一時廃れたが、2000年にEPO検査が開発されると、再び復活傾向に。アテネ五輪から、血液型判別の原理にのっとった新検査が導入された。



という事らしい。


ここまで読んで分かる事をまとめると、

“今回から新しい検査法が土壇場で導入された為、分析の責任者が、
「新しい検査法の細かい部分までは、分析担当者へ徹底し切れていないだろう」
と判断して、いわゆる「グレー」の判定は、責任者判断として「シロ」としてしまった。”

――という事のようだ。


ところが、実際に分析を担当した科学者たちが、
後でその選手の分析結果を聞いて異論の声を挙げた。
それは当然だろう。
自分達は“疑いがある”と言ったのに、“シロ”として報告されていたわけだから。



事件は五輪後、分析班のギリシャ人科学者らが、「あれは陽性だ」と騒ぎ出して、9月9日、IOCの知るところとなる。「寝耳に水だ。一体全体どうなっているのか」と、ルンクビスト医事委員長は仰天する。確認を依頼されたスイス・ローザンヌの分析機関と、新検査開発に当たった豪州の科学者も「確かに陽性」と認めたため、ジャック・ロゲ・IOC会長は16日、急きょ規律委員会を設置。選手代表立ち会いのもと、陽性の公式認定に必要な、Bサンプルの確認分析に入ったが、ここでもう一つの致命的ミスが露見した。Bサンプル用血液が、冷蔵ではなく冷凍保存され、血球が破壊されて、分析が不可能だったのだ。


一度検査した後も、あとで追加検査が出来るように、
血液サンプルは“A”と“B”の2種類を採取し、保存しておくようなシステムらしい。
ところが上記のように、保存方法のミス(手違い)により、再分析が出来なくなってしまったのである。
何故、このような事態が起きてしまったのか?


これまで、血液薬物検査はすべて、血漿(けっしょう)など特定の成分を使うもので、冷凍保存しても質は変わらなかった。陰性のサンプルは、2、3日おいてすべて冷凍保存に回されるのが決まりだった。しかし、血液ドーピング新検査は、血球を含む「血液全体」を使う初のケース。このため世界反ドーピング機関(WADA)は、7月1日付で各分析機関に
「血球を含む血液サンプルは、冷凍ではなくセ氏4度で冷蔵すべし」
との注文を出していたが、手順上の困難さと超多忙などから、アテネの分析機関が従わなかったのだ。



要するに、「面倒だから、いいや」という事らしい。
大変なのは分かるが、仕事なんだから…。
一般企業なら、こんな理屈通らないでしょ。


結局は…


IOCは声明で、「Bサンプルが分析不可能で、規定の手続きを踏めず、ハミルトンの追及は断念せざるを得ない」と苦渋の発表。ルンクビスト医事委員長は「五輪直前に新検査を導入すると、検査側のミスを誘発することが多い。アトランタ五輪の筋肉増強剤検査、シドニー五輪のEPO検査でも人間のミスが重なった。無念極まりないが、我々は教訓を学んだということだ」と振り返る。


どんなに最新鋭の検査法を開発し、導入したとしても、
最終的には“人”の問題になってしまう。
このケースも、文章にすると大層な内容になるが、
結局は些細な“人的ミス”と、“仕事に対するプロ意識の欠如”という、
至極単純な話だ。


昔、自分の師匠に、戒めとして言われた言葉を思い出す。

「“仕事”とは、完璧にこなしてこそ、“仕事”」

う~ん。自分で書いておいて、耳が痛い。




結局ハミルトン選手は、疑惑を持たれたまま金メダルをそのまま受けた事になるが、その後のレース出場中の9月11日に受けた血液ドーピング検査で陽性となり、
ついには所属するスイスのプロチーム「フォナック」から解雇されたそうだ。


何ともむなしさと、後味の悪さが残る事件である。