読売新聞に[薬物最前線・五輪の現場から]という記事が不定期連載されている。
12月21日の回は、アテネ五輪で話題になった、ハンマー投げ・アヌシュ選手のドーピング違反による金メダル剥奪事件。
室伏線種の金メダル獲得という、日本人には喜ばしい結末にはなったが、後味の悪さは、いまだに残っている。
何しろ室伏選手は、競技場に於いて“表彰台”の頂上に上れなかったのだ。
もし、今後室伏選手が五輪で優勝できなかったとしたら、
この事実は取り返しのつかない、大問題である。
さて、記事は長文なのと、
多少分かり難い点もあるので、
私なりに割愛したり、表現を変えて掲載してみた。
あくまでも、読売新聞の記事のアレンジであることを、ご了承いただきたい。
アヌシュ金剥奪の背景
室伏選手の繰り上げ優勝につながった追求は、一人のギリシャ人検査官の疑念が発端だった。
この人物は元ハンマー投げの選手で、ニコス・イェンデコス氏。
ハンマー投げの現世界記録保持者のユーリー・セディフ氏から直前に有力情報を受けていた。
「ハンガリーの投てき選手が過去3年近く、検査所で尿をすりかえる器具を使っている。ハンマーの場合、5投目後にトイレに行き、装着する。」
この情報を受けて、ハンガリー選手をマークしていたわけだが、
案の定、アヌシュ選手が5投目後にトイレ休憩に行った。
恐らくそこで器具を装着したものと思われる。
(直腸内に他人の尿が入ったゴム状の袋を仕込み、尿道口の付近まで管を体に沿わせておく。管の途中のふくらみを押すと、スポイトの様に尿が出る仕組み。)
すぐに検査所長に無線で連絡をしたが、競技の終了後の検査には検査所長が間に合わなかったのだ。
一旦検査終了を宣言してしまえば、それ以上何も出来ない、というしくみの裏をかいた形である。
そこで翌日の円盤投げに出場したハンガリーのファゼカシュ選手には、更なる重点監視を敷いた。
通常、一人が同伴する検査トイレに、イェンデコス氏と国際陸連医師の2名が付いたのだ。ファゼカシュ選手の顔色が変わった。
一人の目なら何とかごまかせるものが、二人がましてや確実に疑いの目を持っていたら、どうにもならない。
ファゼカシュ選手も何とかしようと考え、トイレとの間を3時間も往復し粘ったが、最終的に検査を拒否。金メダル剥奪となったわけだ。
「厳重な監視体制で器具が使えなかった為、トイレでは両脚を閉じ、指示しても手を体から離さないなど尋常では無かった。体を探ろうとしたら拒絶された。」
と、イェンデコス氏は当時の状況を明かす。
国際オリンピック連盟が本腰を入れたのはその後。
不正を発見出来なかっアヌシュ選手の再検査を要求。
その結果、すでに周知の処置になった訳である。
現役時代から室伏を知るイェンデコス氏は言う。
「コウジの人柄を知らなかったら、ここまで(追及に)躍起になったかどうか。コウジは、世界一の実力があるのに、いつも2位になるのをこの目で見てきた。何かおかしい。そう思ったのさ」。
元競技仲間の小さな友情も、追及の背中を押したようだ。
(結城和香子)
このような舞台裏があったとは…。
スタッフの方の尽力により室伏選手に金メダルが渡った、という事実を知ると共に、
完全に体内に痕跡があれば別だが、
やはり「検査」には現状では限界があり、
結局は「密告」による事前情報が不可欠、という事実だ。
それにしても、
共に現役を戦った“同士”が、
「コウジが勝てないのは、どう考えてもおかしい」
と周りの誰もが感じ取れるほど室伏選手の実力は抜きん出ていて、
疑う余地の無い能力を有している、という事が改めてうれしいし、驚嘆する。
ドーピングについては、またこの連載に触れて、
自分の考えを述べたいと思う。
12月21日の回は、アテネ五輪で話題になった、ハンマー投げ・アヌシュ選手のドーピング違反による金メダル剥奪事件。
室伏線種の金メダル獲得という、日本人には喜ばしい結末にはなったが、後味の悪さは、いまだに残っている。
何しろ室伏選手は、競技場に於いて“表彰台”の頂上に上れなかったのだ。
もし、今後室伏選手が五輪で優勝できなかったとしたら、
この事実は取り返しのつかない、大問題である。
さて、記事は長文なのと、
多少分かり難い点もあるので、
私なりに割愛したり、表現を変えて掲載してみた。
あくまでも、読売新聞の記事のアレンジであることを、ご了承いただきたい。
アヌシュ金剥奪の背景
室伏選手の繰り上げ優勝につながった追求は、一人のギリシャ人検査官の疑念が発端だった。
この人物は元ハンマー投げの選手で、ニコス・イェンデコス氏。
ハンマー投げの現世界記録保持者のユーリー・セディフ氏から直前に有力情報を受けていた。
「ハンガリーの投てき選手が過去3年近く、検査所で尿をすりかえる器具を使っている。ハンマーの場合、5投目後にトイレに行き、装着する。」
この情報を受けて、ハンガリー選手をマークしていたわけだが、
案の定、アヌシュ選手が5投目後にトイレ休憩に行った。
恐らくそこで器具を装着したものと思われる。
(直腸内に他人の尿が入ったゴム状の袋を仕込み、尿道口の付近まで管を体に沿わせておく。管の途中のふくらみを押すと、スポイトの様に尿が出る仕組み。)
すぐに検査所長に無線で連絡をしたが、競技の終了後の検査には検査所長が間に合わなかったのだ。
一旦検査終了を宣言してしまえば、それ以上何も出来ない、というしくみの裏をかいた形である。
そこで翌日の円盤投げに出場したハンガリーのファゼカシュ選手には、更なる重点監視を敷いた。
通常、一人が同伴する検査トイレに、イェンデコス氏と国際陸連医師の2名が付いたのだ。ファゼカシュ選手の顔色が変わった。
一人の目なら何とかごまかせるものが、二人がましてや確実に疑いの目を持っていたら、どうにもならない。
ファゼカシュ選手も何とかしようと考え、トイレとの間を3時間も往復し粘ったが、最終的に検査を拒否。金メダル剥奪となったわけだ。
「厳重な監視体制で器具が使えなかった為、トイレでは両脚を閉じ、指示しても手を体から離さないなど尋常では無かった。体を探ろうとしたら拒絶された。」
と、イェンデコス氏は当時の状況を明かす。
国際オリンピック連盟が本腰を入れたのはその後。
不正を発見出来なかっアヌシュ選手の再検査を要求。
その結果、すでに周知の処置になった訳である。
現役時代から室伏を知るイェンデコス氏は言う。
「コウジの人柄を知らなかったら、ここまで(追及に)躍起になったかどうか。コウジは、世界一の実力があるのに、いつも2位になるのをこの目で見てきた。何かおかしい。そう思ったのさ」。
元競技仲間の小さな友情も、追及の背中を押したようだ。
(結城和香子)
このような舞台裏があったとは…。
スタッフの方の尽力により室伏選手に金メダルが渡った、という事実を知ると共に、
完全に体内に痕跡があれば別だが、
やはり「検査」には現状では限界があり、
結局は「密告」による事前情報が不可欠、という事実だ。
それにしても、
共に現役を戦った“同士”が、
「コウジが勝てないのは、どう考えてもおかしい」
と周りの誰もが感じ取れるほど室伏選手の実力は抜きん出ていて、
疑う余地の無い能力を有している、という事が改めてうれしいし、驚嘆する。
ドーピングについては、またこの連載に触れて、
自分の考えを述べたいと思う。