ちょっとだけ泣いてしまったが、
これは単なるお涙ちょうだいな感動作ではない。
最初から最後まで首尾一貫、一つのテーマが
貫かれていたのだ、と最後に気づいた。

落とし所どうすんねん?と観ながら思ってたが
そこで終わるのか、それでいてここで終わるしか無い。

過去と向き合い、自分と向き合い、そして気づいたこと、
それは母親の愛情。

キワコも、エリナも、本当の母親も全員母親である。
この三者から読み取れるものは母親の愛情である。
何よりも子どもの幸せを願い、全てを捧げ、
子どもを守ろうとする母親の愛情である。

これは決して父親=男には分からないのだろう。

ポイントはキワコは堕胎をしていることだ。
彼女は妊娠したときに母親であった。
産まなくともお腹に子を宿したとき、
すでに彼女は母親であったのだ。
だからこそ、誘拐したとき、
すんなりと母親になることができたのだ。
彼女は愛情を捧げる対象を失い、
その結果、その全ての愛情をカオルに注ぐことになった。

ポイントはキワコ=善、本当の母親=悪という二項対立の構図ではなく、
愛情を注ぐ対象を失ったとき母親はまともでいられない
という母親の愛情の深さなのだ。

お腹に子を宿したとき、すでに母親である、
ということは最後の台詞に凝縮される。

母親は無条件に子どもを愛するものである。
そしてそれが本作の全てである。

ぐちゃぐちゃいろいろ複雑な設定があり、
それに気を取られがちになってしまうが、
本作での主張は常にただ一つである。
設定やなんやらはオマケに過ぎない。

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主役の井上真央は若手ですが別格。
かわいいだけではなく、
ますます今後が期待できる女優。

永作博美も、可愛さは最早言うことないがw、
幸薄そうな役どころを演じさせたら、
右にでるものはいない気がする、
それくらい演技が切な過ぎて胸が苦しくなった。

小池栄子の演技も素晴らしかった。
やはり過去にトラウマを抱える難しい役どころ。
世間と少し距離がある感じ、距離をおくことで
なんとか自我を保っているという感じを
とてもうまく出していたと思う。
あまり誇張した演技では嫌らしくなってしまう。
抑えつつ、それでいて、ああこの人も何かあるんだ
と観客が瞬時に感じ取ることができる。
本当にいい演技だったと思う。

それから田中泯。
ほとんど台詞がなくとも、佇まいだけで絵になる。
こういう人がいると映画が締まると感じた。

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