大手自動車メーカーの「春闘」、各社労組が相次いで大幅賃上げを要求(ABEMA TIMES)  

 

 

 今や政府の掛け声に乗って世の中賃上げムードが漂ってきた。と言っても、基本的には大手企業だけだろう。かつては、そういう大手企業が賃上げをけん引した時期もあったのかもしれないが。

 

 今やこういう行動は経済成長と大きく阻害する要因となる。

 

 大手企業の利益の根幹は何と言っても下請け企業である中小企業の高品質低価納入にある。中には独自の技術で高品質高価格を可能にした中小企業もあるかもしれないが、それはホンの一部だろう。

 

 多くは、常にギリギリの線で奮闘させられるのではないだろうか。それは全て大企業の利益を確保するためだと言える。大企業の従業員の給与を維持するために下請け中小企業は常に辛酸を舐めさせられている。

 

 そして、コロナ以前のデフレ時代には相当追い詰められたのではないだろうか。その大きな理由は需要の減少である。そして、コロナによって更なる急激な減少に見舞われたが、度重なる政府の支援で生き永らえた。

 

 そして、コロナで落ち込んだ需要が急激に回復することで、一時的に経済は成長したように見えているわけだが、その状況で政府の賃上げ指令となっているのである。

 

 その言葉を実行するためにと業績の良い大手企業の従業員は一気に賃上げ要求に力が入っている。しかし、時代は人口減少、市場縮小の真っただ中であり、経済成長真っ只中の時代とは反対なのである。

 

 恐らく、今年が賃上げラストチャンスと言えるだろう。来年以降は賃上げなど言葉にも出来ない大リストラが姿を見せて来ると思われる。

 

 本来は、こういう時期に少しでも景気を押し上げようとするのならば、賃上げの主体は中小企業に譲るべきなのである。中小企業と大企業の最も大きな違いは定期昇給の有無である。

 

 キチンと上がる大企業と殆ど上がらない中小企業。大企業の定期昇給を支えているのは、中小企業が定期昇給しない事だと言えるのである。

 

 恐らく、コロナ前のデフレ期に給与を下げられた中小企業の従業員は多いのではないだろうか。仮に下げられることは避けられたとしても、全く上がっていない従業員が殆どだろう。

 

 大企業の平均年収は700万円で中小企業の平均年収は400万円と言われている。大企業が5%の賃上げを実現する費用で中小企業の賃金は凡そ3%程度上げられる計算になる。

 

 金額にすれば月額にして大企業が3万円で中小企業が1万円というところだ。しかし、市場にばら撒かれる額は同じになるが、流通する額は圧倒的に中小企業の人件費を上げる方が景気に与える影響は大きい。

 

 大企業上がり中小企業も上がるのであれば別に構わないが、恐らく、中小企業は上げられるレベルではないと思う。大企業従業員が約1000万人で中小企業が約3000万人と言われる。

 

 当然、大企業の製品を買う人は中小企業の方が多いわけで、そちらの財布が広がれば、大企業に戻って来る可能性は高いのである。

 

 今や企業の内部留保は500兆円を超えており、これはGDPに匹敵する額となっている。そして、これは何で出来ているかと言えば、中小企業の従業員の賃金を抑える事で溜まった額だと言えるのである。

 

 大抵の大企業は、自分たちの力だと錯覚していると思うが、お金というのは誰かが損をすることでしか儲けることは出来ないのである究極のゼロサムゲームなのである。

 

 そのことを忘れる事で経済は滞り破綻することになる。自分だけが儲かれば良いと思う人が増えれば増える程、経済の破綻は早くなるのである。

 

 これが資本主義の隠れたテロメアだと言える。そして、経済破綻によってお金の価値が無くなる。それは貯めたGDP相当の500兆円だって無価値になるのである。

 

 その時初めて知ることになるだろう。一体自分たちは何を貯めていたのかということを・・・・お金の裏にはきっと、人の辛さだとか悔しい思いが詰まっているのかもしれない。

 

 だから、昔の日本人はお金に近寄ることを避けるべきだと考えていたのだろう。全てを無にしてしまうお金の怖さ。お金に捧げた人生は最後は無になるのである。こんな虚しい人生は他にないだろう。

 

 しかし、今はそういう人生を求める人ばかりとなっている。そして、他人はどうなろうと自分さえ良ければそれで良いと思う人がたくさんのお金を手にしているのである。