第三十四夜
コモ・サンジョヴァンニ駅7時55分発のユーロシティーは40分程で
ミラノ中央駅1番線に滑り込んだ。
「いつ来てもこの駅は凄いね~』
久美は大きくホームを覆うガラス張りの巨大アーチを見上げた。
24番線まであるコーンコースは数多くの乗降客でごった返している。
「そうそう、ヨーロッパ各地を結ぶ列車が パノラマ状態で見られるし、
それに東京みたいに乗り換えで階段の昇り下りが無いのは嬉しいよね。
♫イタリアの駅には珍しく2階がホームとなっておりまして、
かの建築家 フランク・ロイド・ライトが
「世界で一番美しい鉄道駅」と賞賛、
一日32万人、500本の列車が行き来する
ミラノ中央駅でございま~す」
有里はガイド口調で誇らしげに話した。
「そうか~世界で一番美しい駅か~
ここからパリやアムステルダムへも行けるし、
今乗って来たユーロシティもジュネーブからだものね。
様々な人間模様が交差するワープゾーン~
ドラマチック・ステーション…」
久美は中央通路の上にある発着電光掲示板を見上げた。
「ヴェネチア・サンタルチア行きは…
Binario12(ビナーリオ ドーディチ)~12番線だ」
有里は指をさすと、久美の手を取り足を早めた。
その時久美の携帯が鳴り響いた。
「はい、金子ですが…え!村野くん?!」
「パリから夜行で、かなり遅れてミラノ中央駅に着いたとこなんだけど、
金子さんコモに来てるんだよね?」
久美は有里の手を振り払うと立ち止まった。
「私もいま12番線にいるよ!!村野くんどこ?」
久美は振り返ると、いま来たコーンコースに向って走り出した。