気温は低く風が冷たいが、暖かい日差しが差す日になった。このまま寛いでいては、残り半日が無駄になる。病院暮らしに慣れた体をヨイショと持ち上げ、洗濯を開始した。PCを立ち上げメールチェックとネット検索。外が暗くなる頃に作業は終り夕食を買いにスーパーへ。退院後、初めての食事は「オムそば」になった。炭水化物中心の食事が続いていた中、体が欲するところに任せて選んだメニューである。




膵炎とはどんな病気なのか、それより膵臓とはナニをしている臓器なのか、そのあたりが知りたかった。まず膵臓は膵臓酵素を出し、それが胆汁と一緒になって十二指腸に流れ込み、そこで脂肪やたんぱく質まで分解するらしい。体の中で最強の分解酵素を出す臓器なのだ。そこで宿主の暴飲暴食、まあ酒の飲み過ぎが度を超すと、膵臓はヤケを起こすらしい。で、膵酵素をドカドカ出すのだが、それが最強なものだから膵臓自身を溶かしてしまう、と。こーゆー訳らしい。このあたりは宿主が飲み過ぎていく様に似ており驚いてしまうが、ヤケ酒ならぬヤケ分泌というところか。それで膵臓はメチャメチャになり、出血したり腹水が出たりして他の臓器にも多大な損傷を与え、事態は深刻化するらしい。もっともアルコールの過剰摂取は、それが原因ということは判っているが、なぜそうなるかというメカニズムは判らないらしい。さらにアンポンタンなオレのように飲み過ぎるだけが原因ではない。胆嚢の異常によっても膵炎は発症する。胆石とか胆汁過多とかで胆嚢を切除した方が発症することもあるのだ。なかなかに油断できない。あまり世間に知られていない膵炎の医学的な側面を、オレの頭でこれ以上噛み砕いて説明するのは不可能なので「慢性と急性の違い」だとかムツカシイことはもう書かない。というか、書ける範囲のことをもう少し。



他に膵炎の恐ろしいところは慢性化すると完治しないと言われていることだとか、回復には刺激を与えないことが一番でそのためには口腔からの食物および水分の摂取は厳禁だとか、恐ろしいことが書かれているのである。ドクターによる報告もかなり読んだが、現在治療中の方のコメントはかなり厳しい内容が続いていた。入退院を繰り返される方、退院して社会復帰しても食事制限が残っている方、あの忌まわしい激痛をかかえて働いておられる方、下手な薬剤師より病気や薬に詳しくなってしまっている方、などいろいろな方がいらっしゃった。



オレがこんな文章を書き始めたのは、この度の奇異な経験を何かに残しておこうと思ったからだ。病気の根絶だとか医療制度の改革だとか、そんなことは考えていない。でもね、ごはんを食べられない病気があるってコトは、もう少し世間に知られてもいいんじゃないかと思う。フツー腹痛でダウンしてれば「早く良くなってご飯を食べて栄養をつけて」って思うだろう。あとドクターがとってくれた措置にしても、膵炎の進行状態が判らないあの状況では適切だったのだろうと思う。




12月10日にオレは病院の前の喫茶店にいた。晴れたり曇ったりの風の強い日で退院して初の血液検査と診察で通院したのだ。退院後、オレは酒を飲みたいと思うことがほとんどなくなった。食べるものも魚が中心になり、肉や油のキツイものは食べたくなくなった。薬の服用は続いている。検査結果と診察の結果は問題なし。再発の見込みすらない。おかげでコーヒーなど飲みながらオレが寝泊りした巨大な建物を眺めている。今後は眺めるだけにしたいもんだ。ホント。