点滴などの穿刺にまつわる話題になるとついつい熱くなってしまうが、
このままだといつまで経っても退院できないので、話を先に進めよう。
11月16日は日曜日。あいにくの曇り空だが、友人代表1号が2号、
3号とともに、お見舞いに来てくれた。ざっと紹介すると1号はオレより
一回り年下の男性、スポーツマン、高学歴、高身長、好青年、独身一
人暮らし。2号は一回り以上年下のチャーミングな女性、独身、家族と
同居。3号は1歳年下の男性、ショットバーのオーナーマスター、妻帯
者。以上の3名で共通点は3号が経営する店の常連である。このオー
ナーマスターは日本アホアホ党の党首を自認しており、オレたちはす
べて構成員になっている。そんな3人がわざわざ来てくれた。二人は
休日を潰して。一人は仕事の前にわざわざ。とてもとてもありがたい。
それぞれのこの日の任務だが、1号は「鋼の錬金術師全巻」の引き取
り。3号は新たなマンガ本の差し入れ。それぞれ入院生活には欠かせ
ないものだ。そして紅一点の2号はなんと折り紙の差し入れだった。
しかもフルカラーのごっつい教則本付きで。「これで退屈な入院生活も
大丈夫ですね」と言われたのだが、思わずドン引き。まあ彼女も洒落
で買ってきてくれたのだが、それをどーしろというのだ。40才過ぎで
独身、無職のオッサンが入院中に無心に折り紙を折っていれば、また
たく間に重大事件の重要参考人として公安にマークされる。最低でも
保健所に捕獲されてしまう!
まあ、この辺りがアホアホのアホアホたる所以だろう。そんなこんなで
デイルームでバカ話に花を咲かせる。途中、3号にわざわざタバコを買
いにいっていただき、今後の入院生活のストックを蓄える。拉致された
状況をリポートし、ドレン挿入時の状況を面白おかしく話したりするうち
に楽しいときは時は経ち、友は帰る。そして折り紙だけが残される。
そういえばこの日、悲しい事件が起こった。昨日の点滴が失敗だった
のだ。またしても点滴の話だが、フリだけでオチがないというのは、関
西人としては許せないのだ。それでまずは昨日、とんでもないところに
針をぶっ刺され、直後からひどい痛みを感じていたのだが、やり直しが
イヤで我慢していたのだ。しかし針の先から直線で2センチほど先の
腕が、パンパンに腫れている。オレは怖くなってしまった。利き腕を避
けて左に刺してもらったのに、これでは意味がない。判断力が鈍った
頭で「あーでもないこーでもない」とヘタの考えを巡らすが、まさに休む
に似たりで、痛みがひどくなってくる。そこに看護師さんが現れたので
「あのー、チョット腕が腫れたりなんかしてから、これは点滴的に大丈
夫的な要素は通常の場合ですか?」と思わずシドロモドロで聞いてし
まった。看護師さんは「あー、コレは漏れてるわ、やり直しましょ」と、
問答無用でやり直しとなる。この看護師さんは新人教育の担当を務め
るベテランなのだが、口調や態度からどうもオレとは愛称が合わない
ような雰囲気がプンプンと匂う。オレはこういうことには敏感なのだ。
確かにこのヒトはベテランで院内でも幅を利かせているようなのだが、
漏れた点滴をはずすのに、べーーーーっとテープを剥がす。腕の痛さ
でオシッコをちびりそうになる。ドレンが入っていればチビレるのに、と
バカなことを考えてしまう。次のテープを剥がすのにカリカリと立てた
爪が、地肌を引っかく。針を抜いたところから血を溢れさせるなど、必
要な処置を半分済ませた段階でオレはグッタリしてしまった。針が腕
の中で動く感覚が非常に気持ち悪く、吐き気までしてきた。グッタリ
のまま残り半分が始まり、気分の悪いオレが右手を差し出しながらも
「顔でも足でも好きなところに刺してもらっていいですよ」と悪態をつく
と、いたく気分を害されたようで「左手は硬くなっててダメね、うん、右
でいこう、右ならいけるわ」とオレに聞こえる独り言をつぶやき、なん
とか終了。しかし腕にトグロはなく、ひらがなの「ぬ」のような形の管が
テープで止められていた。さらにシーツには直径5センチほどの鮮血
が染みていた。看護師さんはなんとかしなきゃ、と張り切ったのだろ
う、オキシドールをもってきてシミを拭いてくれた。お礼をいったがオレ
は一人になりたかった。穿刺の瞬間が痛くなかったのは、グッタリが
良い方向に働いて、究極の脱力状態だったからだろう。相手のおもう
ままに、なすがままにされるのが点滴の妙諦なのだろう。このように
点滴は些細な医療行為なのだが、色々な事件の温床なのである。
次回に続く。が、この日オレは1回の売店で割り箸を買った。なぜだ?
実務が伴っていなかったのだ!