今回の入院は、「食べること」が大きなテーマだった。何しろ絶食期
間が12日間(バターボーロ、キャラメル、カンロ、水分は除く)に及び、
その間の栄養補給は点滴だけ。おかげで体重が10キロ減った。病
気で痩せるダイエットだ。ウレシくも何ともない。急激に体重が減った
ためか、まともに歩けず、頭はいつも靄がかかったようにボンヤリし、
シリアスなことを考えられなくなり、頬はコケ、目つきが悪くなり、かつ
てない程に体力が落ちた。背も縮んだような気がする。かつてビート
たけしが「食べることと出すことが自分で出来なくなると、その人はダ
メになる」というようなことを書いていたが、その通りなのだろう。24時
間点滴でオシッコ袋ぶら下げ状態ならダメダメ状態ということだな。
そのオシッコ袋だが、オレは本当に忌み嫌っていた。看護師に向けて
「この医療行為を患者の承諾なしに行うのは患者への冒涜だ」とまで
言った。アホだから。しかし、なんと! この袋にもいいところがあった
のだ。当然かつ唯一のことだが、オシッコに行かなくて済む。というこ
となのだ。とくに夜中に尿意で目覚めたときや、読んでいる本が山場
に差し掛かったときなど、トイレに行かなくてもいい、勝手に出ていって
くれるというのは、今にして思えば画期的なことだった。
話は変わるがオシッコ袋が取れた後、オレは尿瓶で尿量を量るように
言われていた。トイレのたびに倉庫(各自の尿瓶がこちらに口を向けて
整列している)から尿瓶を出し、便器の前で尿瓶に尿を取り、排出量を
確認し、尿瓶を洗って倉庫に戻し、手を洗ってベッドに戻り、ベッドの脇
に張り出された排出量記録表に記入するのだ。それによると1日の最
大排出量は5リットルだった。多いのか少ないのかは別にして、面倒
なことこの上なかった。毎朝10時に看護師さんがそれまで24時間の
排出量を合計しデータとして記録していくのだが、退院が近づくと、
その集計転記業務もおろそかになるようで「ハイハイ」の一言で終わっ
たり、チラ見で終わることもあった。別にオシッコの量を誉めて欲しくは
ないが、それなら「いっぱい出てます」の自己申告で良いと思うのだ。
その他、メカゴジラ退院後のイビキチャンピオンとは少し会話するよう
になり、オレと同じく絶食→飴玉OKの道を辿っていた彼とは、手持ち
の水溶性糖分補給用菓子の交換を何度か行った。女子中学生かとい
うのだ。これは、引きこもりがちな入院生活の中でのスキンシップだと
いえるだろう。それがどうしたといわれれば、返す言葉はないけれど。
ちなみに絶飲食→絶食+お茶、水、スポーツドリンク+飴、と徐々に
膵臓への負荷を大きくするにつれて、点滴の量は減っていく。入院し
た当初はお徳用巨大点滴を両手にしていたのが、回復に伴い口から
水分を取れるようになり、点滴が片手のみになるか、お試しサイズに
なったりする(お試しサイズはウソ)。その変化は何がどれだけ回復し
たかがわかりにくい内臓疾患の病人にとっては大きな励みになった。
社会から隔絶された患者には、些細なことが嬉しかったりするのだ。
今回は水っぽい話に終始し、時系列に沿った具体的な出来事が書
けなくなってしまった。ノーアイデアで書き出すとこうなるという、悪い
見本だ。次回は少しだけでもなんとかしたい。 ではでは。