これまでオレは、内科ではない病棟にいた。緊急入院ということで、

どこでもいいから空いている病室のベッドに放り込まれていたのだ。

それ11月13日の朝、キチンと内科病棟に引っ越すことになった。

相変わらず車椅子+点滴2本+オシッコ袋のままで。ドレン挿入

現場を美人女医の助手としてガン見していた看護師さんに車椅子

を押されて。




新しい病室といったって、病院に変わりはない。大人しく、医療行為

を享受するまでだ。できれば窓側のベッドで陽光を浴びたいと思う

その選択権など一切オレにはない。しかし入院していると、本当

世間が狭くなる。仕事で外にでて世間と関わってきた感覚がま

くなくなってしまう。例えば窓側のベッドに変えろとか、メシの順番

遅いとか、メシがマズイとか、味噌汁が冷えてるとか、お茶が濃すぎ

るとか、風呂の湯の出が悪いとか、看護師が早口で何を言ってるの

か判らんとか、枕が低いとか、ついついありとあらゆる小さな不満を

看護師にぶつけうになる。オレはそんなこと言わないけど。挙句の

果てには「看護師がスグ怒る、怖い」などとおっしゃる患者さんがいら

っしゃる。そりゃあそんなどーでもエーことを、いちいちナースコールで

言ってれば、看護師も怒るわな。あんたの身内でも怒るだろう。体が

弱り誰かに甘えたいのだと思うが、大部屋でそんなみみっちい愚痴

を聞くでもなく聞かされるこちらは堪ったもんじゃない。あんたの家族

毎日見舞いに来とるじゃないか、とも言いたくなってくる。なるほど、

人は老いると子供に還っていくのかと実感させられる。



まあ、そんな病窓百景はさておき・・・・・。




引っ越した俺に初顔合わせの看護師さんがご挨拶にいらっしゃった。

訛りの抜けない、ペコちゃん人形の顔を正面から2回、頭上から1回、

鉄板で潰したようなお嬢さんである。その看護師さんが「先生がこの

中な歩いてもいいと言ってました。それから水とお茶以外に、スポ

ーツ飲料とか飴とかは口にしていいと言ってました」とおっしゃった。

オレは狂喜乱舞しそうになったが、ググッと冷静に「じゃ、これはどー

の」とオシッコ袋を指さして、優しく看護師さんに尋ねた。重ねて

「これじゃ、歩かれへんやん」と軽くプッシュ。するとペコちゃんは「取

っちゃましょか」といってオレのスウェットパンツに手をかけようとす

る。オレは慌てて自分でスウェットをずらして「エーッ、エーッ、とっ、

とっ、取るっ、取るっ、取るってーっ、とっ、とっ、取ってもいいの?」と、

うわずりながらも出来るだけ冷静に尋ねた。しかし早口。ペコちゃん

はしょーがないなーという顔つきで腰に手を当て「だってこれじゃー

歩けんもんねー」とおっしゃってくださった。「そっそっそうっそう、歩け

んもんなんよー、ふっふっ不便なん、不便なんなん」と解放への興奮

でカミカミのオレ。ペコは光の速さでオレのトランクスをずらすと「ちょ

っと痛いかもしれんよ」といった。「えっ、何がっ」と聞き返そうとした

き「シュッ!というものすごい擦過音が聞こえたような気がした。そ

の瞬間、オチンチンの内側にまさに膵炎の腹痛並みの激痛を感じた。

思わず体全体をひねり「むう!」と小さく叫んでしまう。そのときペコは

すでに、まったく何事も無かったかのように「男は強いねー、私ら我慢

できんもん」と謎の言葉を残しオシッコ袋の撤収にかかっている。オレ

は痛みの記憶に震える下半身に衣類を着け、オチンチンから異物の

なくなったことを実感し、またもや呆然。トランクスから撤収まで2秒。





ペコ・・・、おそるべし・・・。何が何やらサッパリわからん・・・。






一部に謎が残るチャプターだが、次回はそれを解説していこう。




でも手始めに一つだけ。


入院している間、オレは納得できないままオシッコ袋をぶらさげてい

ることに抵抗があったのだ。それがこの朝、一挙に払拭されたので、

ささやかながらもタイトルをクライマックスということにしたのだ。



See you.