まずはドクターが処置室に駆け込んできた。「CTを撮ります。時間が
ないから取りあえず急いでください。で入院しましょう」とおっしゃった。
言うが早いか点滴で不自由な右手にペンを持たされ、CT撮影に同意
した旨の書類にサインさせられた。確かにCTスキャンは現像と技師の
関係で撮影時間が24時間対応していないのだ。しかし最後の「入院
しましょうとは何だ?」と訝しがるヒマもあらばこそ、ベッドごと院内を
ゴーゴーと撮影室に運ばれ、造影剤を注入され、点滴をぶら下げたま
ま、あっという間に撮影された。撮影室で看護師が交代。新しい看護
師は入院病棟の夜勤の看護師だったことが後になってわかる。オレ
はこの時点で、身柄を拘束されていたのだ! ベッドは再び診察室に
運ばれ、そこでドクターの所見は「急性膵炎で重篤な可能性がありま
す、このまま入院してください、ついては手続きをスグにしないといけ
ないのでここにサインしてください、症状については後で説明します、
時間がないのでとにかくサインしてください、サイン、サイン、サイン、
サイ、サイ、サイ、サイ、ササササイン」と、まるで悪徳金融機関のよう
に目を合わせずにただただサインを迫るのだ。その迫力に圧倒された
バカなオレは、不自由な手でサインをしながら、まだ油断していた。
今回は入院するつもりはまったくなかったのだ。しかし百歩譲って入院
は致し方ないだろう。それならばだ、こっちも腹をくくってだ、いったん
家に帰りタバコ吸ってメシ食って酒飲んで兄に電話して、でそこから
もう一回病院にくればいいじゃん、くらいに考えていたのだ。そこで
「じゃ、いったん家に帰って準備します」というとドクターはキッパリと、
オレの目をしっかり見ながら「ダメです」とおっしゃった。
何でも、家に帰って飲み食いしたら体調がどうなるか保証できない、
倒れる、昏倒する、死ぬなど事態は予測できないということなのだ。
オレの行動パターンなど、初顔合わせでも読まれまくっていたのだ。
重篤かもというのは、オレには自由はないということだったのだ。
事態がまったく把握できず、混乱の極みに突き落とされたままベッド
はゴーゴーゴゴーゴゴーゴゴーと入院病棟に運ばれ、途中看護師に
「身内の方にスグ連絡してください」とか「仕事関係の連絡は大丈夫
ですか(身柄を拘束しておいて大丈夫かもクソもネーだろ!)」などと
聞かれながら、オレは力なく「ダメだこりゃあ」とつぶやいていた。
しかし、直後に人生最悪、貞操の機器が待ち構えていたのである。