俳人名鑑
及川 貞 (おいかわ てい)
明治32年(1899)~平成5年(1993)94歳。 東京都生れ。 「馬酔木」同人
秋桜子に師事。昭和8年「馬酔木」に入会。のち同人。第7回俳人協会賞受賞。*府立第三高女(現都立駒場高校)出身
句集:『野道』『榧の実』『夕焼』『終始』
八ヶ岳仰ぐやわらび手にあまり
空澄めば飛んで来て咲くよ曼珠沙華
夫とふたり籠の鈴虫鳴きすぎる
まさしくも子らの星夫の星寒の空
木の芽あへ女たのしむこと多き
大井雅人(おおい がじん)
昭和7年(1932)~平成20年(2008)76歳没。 山梨県生れ。 「柚」主
飯田龍太に師事。昭和28年「雲母」入会。昭和36年同人、編集に参加。平成4年「柚」創刊主宰。
句集:『龍岡村』『消息』『柚子』『大坂上の坂』
三十代静止の貨車の爽涼と
少年の顔月光を得て消ゆる
梅は一人か四五人で見る花か
子猫見し夏の神田はやさしかり
大井恒行 (おおい つねゆき)
昭和23年(1948) 山口県生れ。東京都在住。 「豈」
赤尾兜子に師事。昭和42年「渦」入会。のち「俳句空間」編集人を経て「豈」同人。第23回鬣TATEGAMI俳句賞・第80回現代俳句協会賞受賞。
句集:『秋の詩』『風の銀漢』『大井恒行句集』『水月伝』
針は今夜かがやくことがあるだろうか
日晒しの紙のこよりやわが祖国
木は木として突っ立ち空をみごもりぬ
フランス人形みな美しき核の風
東京空襲アフガン廃墟ニューヨーク
死神に精度はあらず冬の旅
春愁の血は睡れずに佇っている
大石悦子 (おおいし えつこ)
昭和13年(1938)~令和5年(2023))85歳。 京都府生れ。大阪府在住。 「鶴」「紫微」
石田波郷、石塚友二、星野麦丘人に師事。高校時代から作句。昭和31年頃「鶴」入会、同人。俳人協会顧問。第30回角川俳句賞・第10回俳人協会新人賞・第5回俳句四季大賞・第1回日本詩歌句大賞・第53回俳人協会賞・第10回桂信子賞・第13回小野市詩歌文学賞・第55回蛇笏賞受賞。※和歌山大学出身。
句集:『群萌』『聞香』『百花』『耶々』『有情』『百囀』 著作:『師資相承ー石田波郷と石塚友二』
てふてふや遊びをせむと吾が生れぬ
雪吊のはじめの縄を飛ばしけり
これはこれは貝雛の中混み合へる
彳亍(てきちょく)と渚の雪に千鳥かな
夫が手の確かめにくる獏の夜
桔梗や男に下野の処世あり
口論は苦手押しくら饅頭で来い
父の帯どろりと黒し雁のころ
画眉鳥を加へ百囀ととのひぬ
大石 雄鬼 (おおいし ゆうき)
昭和33年(1958) 静岡県生れ。東京都在住。 「陸」
中村和弘に師事。「陸」入会。編集同人。第14回現代俳句協会新人賞受賞。
下半身省略されて案山子佇つ
博多人形裸になれず朧月
舟虫の化石にならぬtめに走る
大石雄介 (おおいし ゆうすけ)
昭和15年(1940) 静岡県生れ。神奈川県在住。
「海程」の同人、編集長を長く務めたが同人誌を主宰誌に変えることに反対し昭和60年退会した。以後「包(ぱお)」を主宰し1日10句20余年間作り続けいる。昭和48年第9回海程賞受賞。
句集:『大石雄介句集』
口吸えば産卵期のひかりの漁港だ
青柿打ちつづければかがやく放蕩
蝶の腹白し二人の食卓に
鳥の霊と鳥ふる霜の山ひとつ
夜桜やしろながすくじらがうねる
大岡頌司 (おおおか こうじ)
昭和12年(1937)~平成15年(2003)65歳。 広島県生れ。東京都在住。
高柳重信に師事。昭和29年寺山修司の「牧羊神」に参加。のち「俳句評論」に同人参加。「ユニコーン」同人。昭和59年「騎」創刊同人。
句集:『遠船脚』『臼處』『花見干潟』『抱艪長女』『利根川志圖』『寶珠花街道』『犀 』『稱郷遁花』『勿來』『渤海液』『慫慂』『大岡頌司全句集』ほか
かがまりて
竈火の母よ
狐来る
*
黄泉の厠に
人ひとり居る
暑さかな
*
我名薨じて
三位となれや
冬の蝶
*
少し動く
春の甍の
動きかな
大木あまり (おおき あまり)
昭和16年(1941) 東京都生れ。神奈川県在住。 「星の木」
角川源義に師事。昭和46年「河」入会、同人。のち「人」「夏至」同人。「梟」などを経て平成10年より無所属となる。平成20年4人誌「星の木」創刊同人。父は詩人・作詞家の大木惇夫。昭和51年河新人賞・第62回読売文学賞(詩歌俳句賞)・第18回小野市詩歌文学賞・第60回蛇笏賞受賞。
句集:『山の夢』『火のいろに』『雲の塔』『火球』『星涼』『遊星』『山猫座』 詩画集『風を聴く木』
イエスよりマリアは若し草の絮
寒月下あにいもうとのやうに寝て
ゆき合へる蟻の突立つ牡丹かな
火に投げし鶏頭根ごと立ちあがる
後の世に逢はば二本の氷柱かな
野村万蔵蹴つて袴の涼しけれ
かりそめの踊りいつしかひたむきに
握りつぶすならその蝉殼を下さい
死ぬまでは人それよりは花びらに
蟷螂は答への出せぬものが好き
大木孝子(おおき たかこ)
昭和20年(1945)茨城県生れ。東京都在住。 「野守」主宰・「刈安」代表。
佐藤鬼房に師事。「沖」同人を経て平成7年鬼房の「小熊座」同人。平成12年「野守」創刊。平成21年同人誌「刈安」創刊。小熊座賞・第9回駿河梅花文学大賞受賞。
句集:『柞繭』『藻臥束鮒』『あやめ占』『蟲狩』
ひつさげてゆく棒鱈と望郷と
しねりしねり亡者踊が塀沿ひに
と見かう見して極月の淫祠かな
飴となるまでさめざめと霜を煮る
にほひなき不犯の生や浮氷
死にたかないねえ暁紅の綴れさせ
大串 章 (おおくし あきら)
昭和12年(1937) 佐賀県生れ。千葉県在住。 「百鳥」主宰
大野林火に師事。大学時代「京大俳句」に参加。昭和34年「濱」入会、同人。平成6年「百鳥」創刊主宰。俳人協会理事長歴任。平成29年俳人協会会長に就任。第2回俳人協会新人賞・第9回俳人協会評論賞・第44回俳人協会賞・第1回千葉県俳句大賞受賞。
句集:『朝の舟』『山童記』『百鳥』『天風』『大地』『山河』『海路』『恒心』
酒も少しは飲む父なるぞ秋の夜は
秋雲やふるさとで売る同人誌
青大将太平洋に垂れ下がり
大昼寝して挽回の見込みあり
朴咲くや雲より馬車の来るごとし
手に取りて細く冷たし母の鍬
水平線大きな露と思ひけり
大島民郎 (おおしま たみろう)
大正10年(1921)~平成19年(2007)85歳。 東京都生れ。奈良県在住。 「橡」
水原秋桜子に師事。昭和19年「馬酔木」に投句。楠本憲吉、清崎敏郎らと慶大俳句研究会を結成。昭和59年馬酔木同人を辞し星眠の「橡」に同人参加。馬酔木賞受賞。俳人協会顧問。※慶應義塾大出身
句集:『灯の柱』『薔薇挿して』『観葉樹』『金銀花』『山』
月見の座閉じて名残の絵蝋燭
夜々おそくもどりて今宵雛あらぬ
牛うまれ牧をいろどる金銀花
山月や新雪のこる丘の襞
大島雄作 (おおしま ゆうさく)
昭和27年(1952) 香川県生れ。 「青垣」代表
能村登四郎に師事。昭和57年「沖」「狩」入会。60年「狩」退会。63年「沖」同人。平成19年「沖」を辞し、「青垣」創刊代表。昭和63年沖新人賞・第9回俳句研究賞受賞。
句集:『寝袋』『青垣』『鮎苗』『一滴』
陸続と来る寒泳の眼かな
寂しくて猪垣に猪突き当たる
あふむけになりたしと死ぬ金魚かな
につぽんは水に浮く国鏡餅
大須賀乙字 (おおすか おつじ)
明治14年(1881)~大正9年(1920)38歳。福島県生れ。
俳論家として近代俳句史に大きな足跡を残す。碧梧桐の無中心諭に反論、虚子の守旧主義を批判。のち、臼田亜浪の「石楠花」を援けた。*東京帝大国文科出身
句集:『乙字句集』 著作:『乙俳論集』
雁鳴いて大粒な雨落しけり
樽を干す木香に人酔ふ返り花
土用浪うち込んで風荻(ふうてき)の四五里かな
稲妻に舟べり叩く謡ひ込み
干足袋の日南に氷る寒さかな
大関靖博 (おおぜき やすひろ)
昭和23年 (1948)千葉県生れ。 「轍」主宰
能村登四郎・福永耕二に師事。昭和41年「馬酔木」に投句。昭和45年「沖」入会。同人、編集長を歴任。平成15年「轍」創刊、主宰。
句集:『点描画』『風速』『轍』『大夢』『五十年』『大楽』『大蔵』 著作:『伝統詩系の復活』『比較文化的詩論考』『ひるすぎのオマージュ』『十七文字の狩人』ほか
つちけむり消えて轍や麥の秋
起きるとは限らぬけれど冬眠す
一汁に一菜そして今年米
灌佛や今日も甘露の日が注ぐ
太田土男 (おおた つちお)
昭和12年(1937) 神奈川県生れ。 「百鳥」・「草笛」代表
大野林火、松崎鉄之介に師事。昭和33年「濱」入会。同人。昭和35年「草笛」入会。平成20年代表に就く。平成6年大串章「百鳥」創刊、同人参加。第10回俳壇賞・第12回俳句研究賞受賞。
句集:『西那須野』『遊牧』『草原』『花綵』『草泊り』 著作:『田んぼの科学』
夜神楽の神を酔はせて酔ひにけり
飢ゑて鳴く鳥もあるべし冬木立
草原に食べ残されて野菊咲く
土着とは草刈ることの繰り返し
星のことよく知る人と草泊り
大高弘達 (おおたか こうたつ)
昭和3年(1928)~平成22年(2010)82歳。 千葉県生。東京都在住。 「面」
西東三鬼に師事。夫人は俳人の大高芭瑠子。「断崖」「天狼」に投句。昭和31年「断崖」同人。のち「面」創刊。「俳句評論」同人参加。
句集:『海鳴りの森』 著作:編著『三鬼の世界』
指立てて蜻蛉待つべし秋津島
十五夜の線香の灰地に刺さり
花野行くオール一本づつ担ぎ
鍋釜のすべて伏せられ万愚節
大高芭瑠子 (おおたか はるこ)
昭和7年(1932)~平成25年(2013)81歳。 「面」
西東三鬼に師事。三鬼の「断崖」を経て「面」創刊。編集に携わる。「俳句評論」同人参加。
句集:『金の針』『朱夏』『炎夏』
三鬼忌の天に吊らるる柱かな
夏富士や靴より抜きし足真つ白
たんぽぽの絮を足蹴に山遊び
大嶽青児(おおたけ せいじ)
昭和12年(1937)東京都生れ。 「瀝」
安住敦、成瀬桜桃子に師事。昭和42年「春燈」入会。同人。平成16年同人誌「瀝」創刊.代表同人。第6回俳人協会新人賞・第47回俳人協会賞受賞。
句集:『遠嶺』『桐の花』『笙歌』
芋煮会松一本の鳴りにけり
きさらぎや粥にのせたる塩こんぶ
太田鴻村 (おおた こうそん)
明治36年(1903)~平成3年(1991)87歳。 愛知県生れ。 「林苑」主宰
臼田亜浪に師事。「石楠」の最高幹部。大野林火,栗生純夫らと活躍した。「林苑」創刊主宰。*國學院大高等師範部出身
句集:『穂の国』『潮騒』『群青』『隠岐の郭公』ほか
天離(さか)る穂の国原や麦青み
明日は咲く白き牡丹にあゆみよる
蛸壺の荒縄さむく運ばれゆく
西行のいのちの山ぞふきのたう
太田紫苑 (おおた しおん)
大正6年(1917) 北海道生れ。東京都在住。 「花藻」
昭和34年「花藻」入会。元「俳句評論」同人。昭和49年花藻作家賞・第2回六人の会賞受賞。このベテラン作家の五十句競作への継続挑戦の姿には頭の下がる思いを持ったものだ。佳作連続入賞。
句集:『描き日傘』『鳥の音』『雪の音』『山の音』『夢の音』
おぶさって足ぶらぶらや天の川
うつとりと夜通しおろす大根おろし
山見ゆるニ間つづきを悲しめり
日の丸をかざし手の甲さびしけれ
北風に真北は何処と問いつづけ
たましひの水の正午は過ぎゆけり
大坪景章 (おおつぼ けいしょう)
大正13年(1924)~平成30年(2018)93歳。 石川県生れ。千葉県在住。 「万象」名誉主宰
沢木欣一に師事。昭和48年「風」入会。平成20年「万象」を滝沢伊代次から主宰を継承。※京都帝大法学部出身。
句集:『常住』『椿垣』
枝の芯までくれなゐのななかなど
向日葵の倒れて種を投げ出せり
大初日このうつし世を呑みつくす
しほさゐの優しき日なり椿垣
大坪重治 (おおつぼ しげはる)
大正14年(1925) 東京都生れ。 「歯車」
昭和24年「麥」入会。のち「響焔」創刊に参加。平成10年同人誌「ぽう」創刊。平成21年「歯車」同人。麥作家賞・第50回現代俳句協会賞受賞。
句集:『土の道』『方来』『直』
白兎かかえて雨にかこまれる
白日や林檎に蜜の入る音
空間に水足してゆく山ざくら
ははきぐさ赤し括られると遺品
大西健司 (おおにし けんじ)
昭和29年(1954) 三重県生れ。 「海程」「木」「鬣」
金子兜太に師事。高校時代より作句を始める。19才で「海程」入会。のち同人。「鬣」「木」同人。第45回海程賞受賞。
句集:『未完の海』『海の翼』『海少年』『群青』
真水すくう双手に蝶の湧くばかり
蜘蛛の囲に少年の嘘かがやけり
牛飼いも蓮如も雪の峠超ゆ
大西泰世 (おおにし やすよ)
昭和24年(1949) 兵庫県生れ。 川柳作家。 「豈」「未定」同人
第1回中新田俳句大賞受賞。
句集:『椿事』『世紀末の小町』『こいびとになってくださいますか』
声だすとほどけてしまう紐がある
なにほどの快楽(けらく)大樹揺れや
まず
わが死後の植物図鑑きっと雨
屋根裏の曼珠沙華ならまっさかり








