初めてその人に会った時。
あまりのいでたちに、凍りつきました。
全身は振るえ、額からは嫌な汗が噴出し、胃からは大量の胃酸がパンプしてくる勢い。
朝のゴミだしで出会ったその住人は、G短パンに、白のTシャツ。
頭には‘のっぽさん’と見まごうばかりの帽子をかぶり、肩まであるロン毛をなびかせて。
最初、後ろ姿だけだったのです。
でもあまりにパンチの効いたルックスに、私はいてもたってもいられなくなって、‘何がなんでも顔を・・・。顔を見せてくれ!!’と、先回り。
振り返ったその‘えせ稲葉浩志’は、何処から見ても‘麻原彰晃’でした・・・。
なんなの!?
その顔とあり得ないアンバランスなその格好は!?
っていうか、どっかみても浮浪者じゃないの!!
ここ、いちよう分譲マンションよ!?
あんた、一体なんの仕事しててローン組めたのさ!?
さっそく興奮さめやらぬ私は、姉に確認。
「ちょっと!!ここにホームレスの稲葉浩志が住んでるよ!?何あれ!?」
「あぁ~、あれね。
あいつ、挨拶もしないでしょ?」
「しないよ!気持ち悪いったらないよ。なんでG短パンはいてんのよ!?」
「あいつね、あれでも学校の先生なんだってさ・・・。」
うそ!?
あんなのが教壇にたって、‘では授業を始めます。何ページ開いて・・・’
ってやってるのかよ!?
ってかもし・・・万が一・・・あの格好で授業やられたら、お尻気になって仕方ないよ。
麻原の短パン姿よ?
私、退学してしまいそう・・・。
しかしもっと恐ろしい事に、この‘麻原浩志(もう合体さすよ)’、当マンションに3人も存在するという事。
どう?
おちおちゴミ出ししてらんないでしょ?
なんらかの魔法、自分にかけときたいでしょ?
3人よ?
3人。
しかもどれがどれか全く分からない程、全員G短パンはいて、肩までのロン毛で、口ヒゲ付きよ?
こないだなんてとうとう、2人同時に出会ったわ。
ちょっといい事あるかもしれない・・・。
でも一人だけとっても愛想の良い、麻原浩志がいるのよ。
でもでもどれがどれだか、見分けがつかないから、エントランスで出会っても、‘こいつは愛想のよい麻原Aか?それとも無愛想な麻原Bか?それとも・・・’って、考え込んじゃって、ろくすら挨拶できなかった・・・。
したら向こうからとってもチャーミングに‘お早うございま~す♪’って。
ビクゥってしちゃって、‘あぁ!お早うございます’って。
挙動不審ですよ、私。
麻原Aだったようね・・・。
こんな事ってある?
これもセシルのなせる業なの?
ってか残り二人の職業って・・・何??
↑フッ・・・。みんな学校の先生なんじゃないの?
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