東北のとある温泉へ、
家族に言われて湯治に行った事がある。
湯治とは言っても、
その湯のあまりの酸性さに、
どちらかと言うと修行の様になった。
この酸性の湯は、どんな小さな傷も見逃さない。
染みるので、こんなところに傷があったのかと思う。
日常的に普通に触っていても、そこには傷が出来ている事を初めて知った。
2日目頃になると、皮膚のあちこちに、
小さな水ぶくれができる。
それが破れると、染みてしまって、
ゆっくり湯船に浸かっていられない。
湯によって傷が出来る。
「何が湯治」だと思ったものだ。
一週間程度滞在の予定だったが、
やる事がない。
癌の末期患者の方が多いのだが、
こちとら皮膚以外は健康体だ。
途中であまりにも暇になり、
山を下りた湖まで気晴らしに行く事にした。
湖の周りを散策していると、
少し登った所に大きな岩があり、
そこに八角形の岩が嵌め込まれている遺跡を見つけた。
急な斜面にそびえる岩。
そこに不自然な形で嵌め込まれた様な岩。
後に調べてみると、昔は鏡の様に輝いていたとの事だ。
いったいこのモニュメントは何だ?
八角形の石の真正面には、
綺麗な三角形の山がある。
そしてその湖の形は、
見ようによっては五角形が崩れたかのように見える。
いったい何の意味があるのか?
縄文の古代遺跡なのか?
出雲の象徴とされる六角形もどこかに隠れているのか?
そんな事が気になり、
湯治から東京へ帰った後は、
しばらくこの湖の伝説や歴史を調べていた。
「いつかきっと、また行かねばなるまい」という気がしていた。
さて。
それから5年以上過ぎ、
不思議な女性、Tさんと出会う訳だ。
出会ってから数年が経ち、その話をしてみた所、
どういう流れだったかは分からないが、
一度行ってみようという話になった。
つづく