ティール組織とは、次世代の組織活動の総称であり、
「従業員に意思決定の大きな権限を与えられ、
管理職がいなくなる組織」です。
このように一言で説明すると、従来の価値観の人が
想像するのは「管理が困難でバラバラになりそう」
とか、「好き勝手やって不正もやるのでは?」
とか心配されます。
実際は、マイナスの要素を抑えるよく考えられたしくみがあるので、
トータルで従来の組織より飛躍的に優れている
部分が多いのですが、確かに不安部分はあります。
ただ、その不安部分をクリアーする努力は、
次の新しい価値観を得るために必要なものなので
全く無駄にならないのです。
そこを乗り越えると全く新しい世界が開けています。
挑戦する価値は十分あります。
ティール組織の採用例が少ない理由
①新しい概念であり、まだ十分に理解されていないだけ
②従来の組織構造ほど効率的ではないとみなされる
③従業員が新しいスタイルの責任を果たすのに慣れていない
④管理が困難、従来の組織構造よりリスクが高い
⑤「儲けること」が一番の目的ではない
①、③について;企業オーナーも、
従業員も新しい概念にまだ慣れていません。
理解不足で正しい運用が出来ず、
うまく行かない例が多く、
「ティール組織はやっぱりダメだ」と
ネットに多くの書き込みがあります。
ただ、正しく運用すれば、圧倒的に
優れていることが理解され
加速度的に増えていくでしょう。
②について;目標を決めて軍隊的に
短期的に行動するのなら、
従来のピラミッド型組織の方が有効です。
組織に求められる役割に応じて
(創造性より生産性、等)
ピラミッド型の陣形のみ踏襲し、
ティール組織の良い部分を
取り込むことも可能です。
ティール組織の本質を理解すれば、
見た目は従来のピラミッド組織でも
応用可能です。
④について;全く新しい価値観を元に
すべてのしくみが作られます。
「従業員を疑い管理する」方針でなく、
「従業員を信じ任せる」ことで、
従業員は自律的に行動します。
間接部門はほとんど必要なくなります。
会議を含めた進捗管理や上司への報告も
ほとんど不要でSNSで共有するだけです。
但し、その組織を機能させるためには、
従業員一人ひとりが期待する役割を
果たせるようになっている必要があります。
「そんな優秀で信頼できる従業員など、
ほとんどいない」と従来の価値観の人は
思います。
ティール組織は、それを可能にしている
よく考えられたしくみにより、
働きながら育成していきます。
そういった隠された努力の下に
ティール組織は成り立っています。
⑤について;ティール組織は儲けること
が目的ではありません。
組織の目的を達成するための原資を
稼ぐために、
また、従業員が暮らせるために、
企業が存続するために、
利益を得ることは必須です。
でも、利益は後からついてくる、
という考えです。
この点は企業オーナーの価値観に
よりますが、
ティール組織への理解が深まれば
挑戦してみたいと考える企業オーナーが
増えるのでは、と考えます。
ティール組織の優れている点
①ティール組織はより柔軟で適応性が高いため、
変化にうまく対処できる
「多数決」で無理やり意見を統一
させるのではなく、
1人の意見を誰も止めることはできません。
その代わり「助言システム」という
関係者に相談するルールがあります。
たとえ反対意見が出ても止めるのではなく、
最善となるアドバイスをします。
②ティール組織は従業員の士気を高め、
よりクリエイティブで革新的なアイデアを生み出す
上司は存在せず問題が起これば
「紛争解決システム」
というシステムで解決させます。
「自由と責任は同じコインの裏表」です。
とことん責任を持って、従業員一人ひとり
が企業オーナーの気持ちで働きます。
そして、周囲の従業員と深くつながり、
同じ目標の下協力し合います。
そんな職場がどれだけ心地良い環境か、
容易に想像できると思います。
③ティール組織は管理コストを削減し、
より効率的になる
ティール組織は管理が困難で、
従来の組織構造よりも
リスクが高いと見なされることがよくあります。
確かに間接部門がごっそりいなくなり、
従業員個人やグループが自治するわけですから、
その気になれば不正は容易です。
ただ、すでに今のピラミッド組織でも、
度重なるデータ改ざんや不正は起きています。
ティール組織のパイオニア組織のオーナーは、
「ティール組織に移行後、管理しなくなって起きる
不祥事は、以前より少ない。」と言われています。
ティール組織に向かう理由
いくつかのマイナス要素があっても、
ティール組織は圧倒的に従来組織より優れています。
それは時代の流れにマッチしているからです。
①組織で動く時代から、優秀な個人で動く時代
従来の部下の役割はAIが行う
②組織が「従業員の育成」を兼ねるしくみが必須になる
職場の経験者の知識すらナレッジマネジメントで得られる時代は、
従業員の育成は「空白を埋める勘」「創造性」中心となる。
「上司や先輩の指導」ではなく「コーチング」が必要になる。
③長期計画をやめ、日々の業務を継続的に改善するスタイルになる
先を読めない時代になり、ピラミッド組織の頂点にいる1人の
リーダーが判断を下すのでは機能しなくなりました。
従業員一人ひとりがアメーバのように、リーダーとして考え
判断して、自分の役割を責任を持って明日のために動くのです。
「従来型組織では、5年先を見据えたうえで翌年の計画を立てる。
ティール組織では、20年先を見据えたうえで翌日の計画だけを立てる」
④人類存続のための環境保護活動に効果的
環境保護活動で有名なパタゴニアは、
「ベネフィット・コーポレーション」
(=「Bコーポレーション」)
と呼ばれる企業形態を2012年に採択した
カリフォルニア州で最初の企業です。
Bコーポレーションは営利企業でありながら、
社会問題や環境問題に取り組むと謳っており、
利益のみ追求する株主との関係は終わりました。
現時点の営利企業(Cコープ)でティール組織を
採択することが難しくても、近い未来にBコープは増え、
その組織はティール組織を採用するでしょう。
参考文献:英治出版「ティール組織」フレデリック・ラルー著