ふと手に取ってみた本。

『彼女は頭が悪いから』
タイトルが衝撃的ですよね。


登場人物を含めすべてフィクションとして書かれていますが、2016年に起きた東京大学学生による集団強制わいせつ・暴行事件に着想を得た作品で、当時の報道や公判記録などが利用されています。



題名は、被害者女性を暴行した心情について問われた際、加害者学生のひとりが公判で実際に口にした言葉から取られているそう。



物語の概要はこう。


横浜市郊外のごくふつうの家庭で育った神立美咲は女子大に進学する。渋谷区広尾の申し分のない環境で育った竹内つばさは、東京大学理科1類に進学した。ふとしたきっかけでふたりが出会い、ひと目で恋に落ちたはずだった。しかし、人々の妬み、劣等感、格差意識が交錯し、東大生5人によるおぞましい事件につながってゆく。



最初から最後まで、読み進めていくのが辛くなる程、「非さわやか100%青春小説」です。



事件の背景に隠された、学歴格差、スクールカースト、男女のコンプレックス、理系VS文系など、日本人の差別意識を顕にした、とことん切なくて胸が苦しくなりました。




被害者の美咲がなぜ、「前途ある東大生より、バカ大学のおまえが逮捕されたほうが日本に有益」「この女、被害者がじゃなくて、自称被害者です。尻軽の勘違い女です」とまでネットで叩かれなければならなかったのはなぜか?



その答えはこう。


「頭の良い人間は、頭の悪い人間に対して、どんなことをしても良い」

「勝ち組は負け組に、どんなことをしても正当化される」という思想があるから。



人は皆平等なんて綺麗事で、学歴、性別、出身階層などでさまざ優劣がつけられ、序列化され、「あちらとこちら」で分断を生み出します。「対等」や「公正」はない。あるのは「分際」だけ。






私の方が優っているとホッとする「優」の気持ち。


相手にとって重くない女であろう、相手に過度に気をつかってしまう「劣」の気持ち。



確かに自分の中にもあります。優劣の気持ちと分断の意識があることに気づきゾッとしました。特に劣等感は、無駄にそして勝手に感じているだけなので、もう手放そうと思っています。




後半は切な過ぎて読み進めるのが辛かった程。色々考えさせられる一冊でした。




小説を読んで主人公の人生を擬似体験することで、自分の人生を考えさせられます。