タイトル:「ENIGMASIS
アーティスト:UVERworld
ENIGMASIS (初回生産限定盤A) (CD+Blu-ray) (特典なし)


UVERworldにとって12枚目のアルバム
タイトルの意味は、ウィキペディアによれば「UVERworldが縦横無尽に作曲しても着地点は謎」ということを示している模様ですが、「30」に続いてのスピードリリース
それも今回、先行シングルは「ピグマリオン」だけ
「Theory」や「ANOMALY奏者」は早めにお披露目されていたとはいえ、それ以外はほぼ新曲
かなり自由度が高いアルバムと言えるのではないでしょうか

しかもサウンド面は「30」からの継承
「ビタースウィート」のように、ゴリッゴリなベースにセンチメンタルなギターリフが印象的な曲があるように、バンド路線を継続
これは多くの人にとって嬉しいのではないでしょうか?
「UNSER」は大きく評価二分してましたし…
UVERは自分たちの好きなことをやるバンド
なのでcrewに合わせたわけではなく、たまたま今やりたいのがバンドアンサンブルだった
そういうことなんじゃないでしょうか

「Brake of dawn
次の闇が訪れる前に
Victory spiral
巻き込んで得てく」

のように、広大な会場でやれはやるほどスケールが増すだろう「VICTOSPIN」は屈強なスタジアムサウンドであり、ロック

ある曲を除けば個人的にアルバム1番だと思う「echoOZ」は流麗なメロディーと共に、

「人生最期の日が訪れて
その時 二人で流す涙も
幸せの涙になるように
この先の辛い
一人にグッバイ
二人の世界」

が心にグッと

かの名曲、「Don't Think.Feel」に曲名が似ているようで、カラーは大きく異なる「Don't Think.Sing」は、

「We are the Rising SUN
We are the Supernova
We are the Audacious
Don’t Think.Sing」

と音圧も歌詞も勇ましさの固まり
バンド路線のUVERが好きだった方にこのアルバムは相当刺さるのでは
自分はそう考えています

一方バンド寄りではない2曲には、ゲストミュージシャンも参加しており、ジャズテイストに寄ったメロウな「ENCORE AGAIN」ではBE︰FIRSTのSHUNTOが参加
ドームワンマンが決まったグループのボーカルが参加するなんて、今思えば凄いことですが、

「決めたラスト一回の
その先の未来を
見てみたい 見せたい
絶対じゃ無いってとこ」、
「これが上手く行かなきゃ辞めよう
決めたラスト一回の
その先の未来にしかない
希望があるってとこも」、
「くだらない奴ばっかだから
愛も散々だったけど
終わらせようとした未来で
君に出会えた」

とこうしたフレーズは全てが順風満帆ではなく、何度も何度も倒れかけそうになった者達のストーリー
crew以上に、BE︰FIRSTの内面を知る方のほうが歌詞にグッと来るかもしれません(ロッキンオンやMUSICAのインタビュー読んだ方なら特に)

またANARCHYとコラボした「FINALIST」はこれぞドラムンベースのど真ん中
しかもそこにホーンが載るというUVERだから出来るミクスチャーロック
多分ANARCHY来ないとやらないだろうから、聞けた方は相当レアなんじゃ?
自分はそんな風に考えています

そのうえでバンドサウンドの曲に再び焦点を当てていくと、最初はR&B寄りで途中からギターロックに変化する「α-Skill」、これが元々MUSICAで「Sunday」と呼ばれていた曲だと思うのですが、

「音楽だけが
孤独を包み
寄り添ってくれる
閉じた心の隙間からでも
生きる意味をくれる」

はマイノリティの心境を感じて、TAKUYA∞があえて綴った歌詞だと思いますし、

「映画のストーリー
落ちこぼれ達が夢を叶えると
なんか泣いちゃうんだよな」

はTAKUYA∞なりのフィクションへの没入、並びに

「きっと僕は
持たざる者が起こす奇跡に自分を投影し
心を動かされてきた」
「そしていつか
選ばれずに 持たざる君が僕に自分を投影し
起こす奇跡」

と持たざる者が起こすストーリーに感動し、自分にもシンクロする
そういった事がここに描かれていると思われます
どうしても先行して発表されていたあの楽曲達の印象が強くなりがちですが、「α-Skill」もスルーしてはならない名曲
自分はそう思っています

エレクトロテイストだったのが徐々にジャズテイストに変わり、

「これが君の最後から 2番目の恋だといいな
どんなに悲しい思い出も
曲にして歌ってさ
綺麗にする僕はずるいよね」、
「ずっと友達のフリをすれば 友達に戻れるかな
本当は悲しいくせに
綺麗な曲にする僕はずるいよね」

とTAKUYA∞が自虐する「two Lies」を終えると、アルバムは終盤
その終盤を担うのが2022年末の時点で、ライブで披露されていた「Theory」達
再三話していますが、この「Theory」は「REVERSHI」に収録されていた「セオリー〜」のリメイク
だから純粋にはこれ新曲というより、再度作り直された曲なんです
元の楽曲のメロディーが良かったので、ビートを中心に先導されるエモくセンセーショナルなギターロックの部分も継承されているのですが、

「僕は あんなに感動した映画も大概
よく出来た小説も大体
一度きりかもしくは数回しか見ない場合が多い」

の部分、TAKUYA∞のみならず該当する方は多いはず
即席麺というわけではないけど、一度見たらあまり見返さない
そんな経験を抱く人は多々いらっしゃるでしょう
だけど、

「なのに 音楽だけ繰り返し今日も
おかしくなった?ってくらいずっと
何度も歌いたくなる 歌を
何度も聴きたくなる 曲を」

と音楽は何度でもリピートする
結末が分かっているのに
それはトラックメイキングにおいても影響を及ばし、

「だから一曲だけでも良いから
たった一曲だけで良いから
君が忘れられない歌を
聴けば現在に戻れる曲を」

と一球入魂ならぬ一曲入魂と言わんばかり、一度でも記憶に残る曲を作ろうとする
UVERの制作理念はここにもあると言わんばかりではないしょうか

更に、

「目が見えなくても
聴こえなくとも
感じてくれてること知ってからは
跳べなくなっても
声を失っても
辞める理由にはならないや」

これ、TAKUYA∞が実際にライブでも話していた話で、UVERのライブには視力が無くても、聴力がなくてもUVERのライブを見に来る方がいらっしゃる模様
どのようにライブに臨んでいるか、それは簡単に予想できるものではありませんが、身体の一部が機能してなくても、ライブを楽しむことは出来る
そうやって楽しむ方がいる以上、仮にTAKUYA∞達がそうなったとしても、音楽を辞める理由にはならない
それでも続けなくては、となるわけであり、

「僕らの この人生は僕らだけのもの
でも このバンドは君の人生でもあるんだね
いつかこうやって 伝えられなくなろうとも
もう この想いは失われるものじゃない
忘れられるものじゃない」

のように、UVERの存在はTAKUYA∞達だけでなくcrewにとっての人生にもなった
だから簡単に辞められるものではないのです

「いつも この音の中には
ああ 呆れるほどに未来の希望を信じてる
毎年 僕らの名場面ランキングの中には
あなたが 僕らの歌を歌う姿
その姿ばかりを」

の通り、crewが歌う姿がUVERにとっての名場面
crewがいてこそのUVER
それを象徴するような、今後絶対欠けてはならないようなピースと「Theory」はなると思います

そしてそれはアルバム唯一の先行シングルだった「ピグマリオン」もそう
序盤はデジタルクワイアを用いたTAKUYA∞の歌が中心となりますが、

「泣いてる間だけでも良いから
抱きしめて欲しい それだけだったんじゃ無い
泣いてる間だけでも良いから
離さないであげて」

と弦楽器の音を通さないTAKUYA∞の歌声から伝わるのは少しでもそばにいて、寄り添ってくれというメッセージ
これが後半、バンドが加わって音圧が強くなると、

「付けられた傷は跡が残った
キャンバスは白に戻らなかった
君は変わった あの頃の方が好きだった
そう思ったときは 大体変わってたのは自分もだった」

の如く、示唆されるのはもう元に戻れないこと
真っ白だった身体は次第に何かに染まる
それは避けられようのない宿命なんです
だとしてもTAKUYA∞が願うのは、

「忘れずに居たいよ
友の言葉を
越えてきた夜を
これからの景色を
誰しもが誰かの大切な人ってこと」

と過去も未来も忘れず、なおかつあなたは誰かの大切な人だということ
そこから2曲、既にライブで演奏されていたジャズテイストの「ANOMALY奏者」、再び壮大な物語が幕を開けることを告げるような新SEの「ENIGMASIS」を持って、このアルバムは終わりを告げます

先行シングル1曲のみ
これはUVERのアルバムでは史上初の出来事のようです
しかも「ピグマリオン」が1番美味しいところ持っていく
今回もとても心に残る名盤になったと思います

日産スタジアム2daysのあと、この「ENIGMASIS」の横浜アリーナ2daysの座席割を巡ってUVERは炎上する事態になりました
あの座席割は駄目だって…
スタッフ止めろよ…

あれで世間からの評判を少し落としてしまった気もしますが、アルバムだけは正統に見て欲しいです
傑作だし、心を洗われるから