四半世紀ほど前の話です。

会社帰りのある日、近所のCDショップに寄りました。

すると売り場に小さなテーブルが設置してあります。

そこには『スピッツって知ってる?』という貼り紙がありました。

ひとつ500円のカセットが並べてあり、既に何曲か録音されています。

これを聴いてみて良かったら、CDもどうぞお求め下さいとのこと。

カセットを、買いました。

残念ながら曲目は忘れてしまいましたが、翌日、アルバムを1枚買いました。

そしてまたその翌日1枚買って、その繰り返しですぐに全部揃ってしまいました。

CDウォークマンの時代。

帰り道、待ちきれずパッケージを開けて、星のほとんど無い夜空の下で初めて聴いた1曲目のイントロと言ったら!

名作『オーロラになれなかった人のために』に収録された1曲目、『魔法』。澄んだギターのはっとするような音色にホーンセクション。文字どおり魔法にかかってしまいました。

傑作『名前をつけてやる』の1曲目、『ウサギのバイク』。やはりギターの甘く可愛らしいメロディ。

まるで世界は私の為にあり、時間はスピッツの為にあり、あらゆる喜びが小さなCDウォークマンの為にありました。

そして当時最新アルバム『Crispy!』の発売当日、ショップに出向き手に入れました。

あれ、CDなのにレコード大の袋に入れてくれてる。中に何か入ってる?店員さんは笑顔です。

開けてみたら、レコード大のポスターにメンバーのサインがあしらわれていました。

(コレ、いつか高く売れる日が来る?)せこい私は思っていました。

サイン入りポスターはCDの予約特典だったようです。予約した人が少なかったのね。余っていたのね。

私は曲さえ聴ければ良いので、特典目当てにCDを予約したことはありませんでした。

ヴォーカルの草野マサムネは、サインの脇にカエルのイラストをちょちょいと描いています。

メンバーそれぞれ、何枚か知れず、売れる日を思い浮かべてサインしたのかしら。

その時まだ私の周囲は誰もスピッツを知りませんでした。(自慢です)。

遅く帰宅した日は、台所で夕食を一人とりながらCDを聴きました。

『何聴いてんの?スピッツ?知らねえな』お兄ちゃんそのセリフ、2回聞いたよ。

ある日、テレビ神奈川の夕方の番組『ミュージック・トマト・ジャパン』に草野マサムネが出ていました。オレンジ色のロゴTシャツを着ています。見たことある…とアルバム『Crispy!』の歌詞カードを確かめたら、『ドルフィン・ラヴ』の歌詞カードがコラージュになっており、その中に同じTシャツ姿の草野氏が!

毎週好きで聴いていたFMの番組にも呼ばれていました。

『息継ぎ無しでよくあんなに歌えますね』というmcのひとことが印象に残っています。

それらが、始まりでした。