同期のボディビルダーが大会に出た。もちろんボディビルダーの大会である。彼のことを僕は脳筋だのなんだのと散々いじり倒してきたので、そのいじった責任も多少あって応援に行った。
彼は階級的に少し後の方だったので、僕はそれに間に合うように会場に駆け付けた。ボディビルダーの大会って階級とかあるんだって思った。世の中には知らないことが溢れている。

そして会場が近付くにつれ、僕は異様な気配を感じ取る。会場から駅までの道を歩いていると、先の戦いで敗れたのであろうマッチョたちとすれ違った。会場に近付くほどにマッチョの数は増える。なんだこの独特な光景は。これはあれだ。舞浜駅を降りてディズニーに向かっていると、ディズニーに近付くほどコスプレしてるゲストや笑顔のキャストが増えゆく中で胸の高鳴りが強まるあれだ。どんどんマッチョが増えていく。この先にはシンデレラ城の形をしたゴールドジムでもあるのだろうか。ただ、胸が高鳴るかと言われるとまぁそんなことはなかった。

会場につく。物販にはオリジナルTシャツやあらゆる味のプロテインが並ぶ。ここは恐らくマッチョにとっては夢の国なんだろうなって思った。きっとこのプロテインたちはポップコーンとかに見えてるんだろうなって思った。独特だ。

そんな光景をよそに、僕は自分の席についた。舞台の上でマッチョがポージングをしている。ボディビルダーの大会なんて初めてだ。みんな仁王像みたいな体しててヤバってなった。
僕の思い描くボディビルダーの大会だと、客席の人も拳を突き上げ唾を飛ばし大声で応援しているイメージだった。だが、悲しい哉コロナ対策で客席は歓声禁止である。同期に「デカすぎてルートとれなぁい!!」「肩にストレッチャー入ってんのかい!!」とか言ってやろうかと思っていたが残念だ。そして仕方のないことなのだが思ってしまったことがある。舞台には笑顔で筋肉をアピールするマッチョがいて、それを包むのは静寂と重厚感のある音楽。これ、客観的に見るとだいぶシュールだ。いや仕方のないことなのはわかる。だがずっとその光景をなんとなく見ていると、だんだん自分が死後の世界に来たんじゃないかと心配になってくる。

そんな臨死体験こそしたものの、やはり見てみた結果感想としてはすげーなって感じだった。世の中にはこんなに多くものマッチョがいたのかと驚愕した。20人くらいのマッチョたちが一同に会して円になっていた時はなんかのキャラクターセレクション画面かと思った。

そしてそんな大会で同期はちゃんと表彰されていた。彼は週7ジムに通って食事とかも綿密に制限して、それこそ生活をボディビルに擲っていた。ちゃんと目標を持って努力し続けて結果を出したのは純粋にかっこいいなって思った。ジャンルを問わず、何かに熱中できる人を僕は尊敬する。
おめでとうって心から思った。