(東のたぬきうどん=西の天ぷら(かき揚げ)うどんの説明は割愛します)

子どもの頃住んでいた神戸•明石あたりで、

以前に書いたような小魚の鍋一杯の醤油煮でなく、

ある程度の大きさの煮魚として、カレイ類と並んで喜ばれた代表には、

メバル(アカメバル,クロメバル,シロメバル,スズキ目カサゴ亜目メバル科メバル属)、

ガシラ(カサゴおよびウッカリカサゴ,同カサゴ属)等があります

近年は高級魚化していますが、元は比較的安値で手に入る美味しい魚の代表でした

 

その中でも、昔から美味な煮魚の材料として、

魚屋の店頭で他より高値で売られていたのが、

アコウ(キジハタ,スズキ亜目ハタ科アカハタ属)でした

赤い体の一面に、たくさんの小さな黄色い斑点が特徴的なアコウは、

40cmほどまでに成長する、ハタ科の中では中型の大きさの魚ですが、

自分が子どもの頃は、10cm以下の若魚の煮付けか水煮きが、

たまに食卓に並ぶ、お得なご馳走でした

 

成人するまで、刺身等、他の料理は口にしたことがありませんでしたが、

しかし水煮きや湯引きを初めて食べた時は、

アコウの美味しさに改めて驚かされました

クエ類,ハタ類はだし醤油味の鍋でも美味ですが、

私は水煮きにしてポン酢おろしで食べるのも好みです

 

アコウという名は、瀬戸内中心に西日本で一般的な方言で、

キジハタは漁獲量の少ない東京近辺の方言でした

戦前の東大を中心とした魚類•水産学者が、

全国的な状況を全く考慮せず、東京の方言を安直に標準和名としたおかしさが、

指摘される代表の1つとして、キジハタが挙げられることが多いようです

 

とは言え、いまさらアコウに変えるのも、

なかなか難しいところがありそうですし、

関西•瀬戸内に住むものとしては、少々天邪鬼と言われそうですが、

このキジハタについての学者方の判断は、

結論的には、妥当なのではと思っています

 

西日本では圧倒的にアコウがキジハタの方言ですが,

東日本でアコウというと、アコウダイ(カサゴ亜目メバル科メバル属)が、

広く方言として用いられています

 

深海性のメバル類は水揚げすると目が飛び出すこと多く、

メヌケ(目抜け)と呼びならわされていますが、

その中でも日本近海で最も南に生息する、アコウダイ(メバル科メバル属)は、

最近は漁獲減少しているとはいえ、

アコウの名が東日本に広く定着しているのも確かです

 

余談ですが、子どもの頃、アコウは、播州赤穂名物ゆえと思っていました

しかし地名の赤穂の由来は、

平安中期のA.D.930年代には記録がある、

植物のタデ(ナデシコ目タデ科イヌタデ属サナエタデ節)を中心とした、

10種以上の、赤みがかった穂状の 花が、刺身のつま等に用いられるタデ類からです

 

魚のアコウは、アカウオ(赤魚)のことで、

メバル類を中心とした、主に関東以北の200m以深の深海から揚がり、

体が赤く、食用として比較的安値で取引されて来た魚の総称でもあります

 

和名アコウダイは、西日本ではほとんど採れませんが、

他の似た姿の、体が赤いスズキ目の食用魚と共に、アカウオとも呼ばれてきた中、

西のアコウと並び、その中でも最も美味というニュアンスがあるようです

 

でも実は、和名アカウオとしては、似ても似つかない別の魚がいます

有明海や児島湾等で絶滅危惧種としてわずかに残る、

スズキ目ハゼ亜目ハゼ科アカウオ属の、

皮膚に色素が少なく、血液が透けて赤く見える、

一見ワラスボ類(同ワラスボ亜科ワラスボ属)

に似た姿の魚のことです

だから今さら、アコウダイをアカウオとも呼ぶのはさわりがあり、

現在の、アコウでなく別名のアコウダイとの和名の方が、

まだ紛らわしさが少ないのではと思われます

 

丁度、地元で採れるアカウオの中でも一番好まれるものを、

アコウと呼び習わしてきたのが、これまでの日本の東西共の風習だったようですが、

それも最近では、これまでの近海物アカウオの価格が上昇するにつれ、

アカウオのメンバーも変わりつつあるとのこと

近年スーパーでアカウオとラベルされているのは、

アラスカメヌケ(北太平洋産),モトアカウオ(タイセイヨウアカウオ,北大西洋産)等、

底引き網等で大量に獲れ、冷凍で日本に送られる、メバル属の深海魚が多いようです

現在日本中で大量に消費され、食卓に上る多くのアカウオは、

この2種と考えて良いようです

少なくとも、切り身やフィレで出回るこれらの魚は、私には区別が付きません

まあ、保存や会頭の仕方が味に大きく影響するようですが、

価格を考えると、私は十分お買い得で、乱獲さえなければ、

アコウ(類)もアカウオ(類)も、末永く楽しませてくれる魚と思っています

 

なお、これは神戸明石でどれだけ一般的かは良く分りませんが、

アコウの煮付けでは、タイの酒蒸しのように、

まず少なめの日本酒(塩の入った料理酒では辛くなりがち)で蒸し煮にし、

それを短時間煮付けにしたものが、とても上品で美味しい味になり、

個人的には、サバの煮付けの次に好きな、煮魚の味でした(2025.9)

 

付記:旧カサゴ目の系統分類は、

形態による、あるいは遺伝子等による、

それぞれの分類の結果を見比べてからと思い、

これまで個人的に、カサゴ目(暫定)としていました

しかしなかなかそのような報告を目にする機会が持てそうにないので、

今までの文章につけていたテーマも含め、

現在最も支持が多い、

スズキ目カサゴ亜目魚類に改めたいと思います