近所のショッピングモールの中庭に鳩がたくさんいる。
人間がこぼす食べ物にありつこうと鳩がトコトコと歩いている。
近づいても逃げない。
更に近づいても逃げない。
そしてぶつかりそうになったその瞬間、鳩は早歩きになり衝突をかわし、そ知らぬ顔でまた食べ物を探しトコトコと歩き続ける。
・・・
会社で動作の遅い人がいる。
私が呼ぶと30秒くらいでようやく席から立ち上がりのっそりのっそりこちらに歩いて来る。
5メートルくらい離れた所から呼んでもこちらに来るまで1分くらいはかかるだろうか。
普通、上司に呼ばれたら直ちに立ち上がり素早く早歩きで動くものだと思うが、この世の人間にはその常識は当てはまらないようだ。
そんな彼女がオフィスでのっそりのっそり歩いている姿に遭遇する時がある。
私は早歩きで歩いている。
彼女は亀さんのように移動している。
「もうすぐぶつかる」
「どうなる。。」
「ぶつかるのか?」
「ああ、もうダメだ、ぶつかる」
その時だった。
彼女が素早く身をかわしながら移動方向を変えたのだ。
しかも目線はあさっての方向を見ながら私を寸前でかわし急に素早く移動したのだ。
そう、亀の動きではなく、あの鳩の動きだったのだ。
彼女の内部はどうなっているのか。
頭脳から身体への神経の指示系統は?
潜在する身体能力は?
防衛本能なのか。
まさに鳩のあの動きそのものだ。
普段の姿は仮の姿なのだろうか。
いや、そんなことはない。どう見ても素の姿だ。
のんびり、のっそり、のらりくらり。
しかしながら身の危険が迫ると視線を向けることなく寸前で素早く動き危険を回避する。
まさに鳩の動きだ。
人間観察をしているとその生態と意識、潜在するものは計り知れないと改めて思わされる。
・・・