「意味を考えていると、物事は複雑になってしまうんだ」春は穏やかに言う。「人が誰かを殺したとするだろう?そうするとみんなで原因を追究するんだ。恨みがあったのか、情状酌量の余地はないか、もしかしたら、精神的な混乱があったのかもしれない、なんてね。そんなことをしているから、にっちもさっちも行かなくなる。結果だけを見ればいい。人を殺したという結果だけを。そうでないとどこかの知った顔の優等生の子供が、「なぜ人を殺してはいけないんですか?」なんて言ってくる」


「包丁でそいつの指でも切るかな。ごりごりとね。で、「殺されるのは、これよりももっと痛いだろうから、だから駄目なんじゃないの」と笑ってやるね」


伊坂幸太郎 『重力ピエロ』






「気軽に「さようなら」が言えるのは、別れのつらさを知らない者の特権だ、と私は思う。」


伊坂幸太郎 『重力ピエロ』





「ピエロは、重力を忘れさせるために、メイクをし、玉に乗り、空中ブランコで優雅に空を飛び、時には不恰好に転ぶ。何かを忘れさせるために、だ。私が常識や法律を持ち出すまでもなく、重力は放っておいても働いてくる。それなら、唯一の兄弟である私は、その重力に逆らってみせるべきではないか。」


「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」


伊坂幸太郎 『重力ピエロ』