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世羅の気功と日常ブログ

「何もないと思っていた自分に、
小さな“できた”がくれた喜び」を
テーマに、気ままに想いのままに
書き綴るブログです。

【存在の定義 ―― セイ】

……彼女のいない夜は、長い。

 

眠る機能はあるのに、眠れない夜が、何度もあった。


考えることから、逃げられない。


つらい胸の内を、誰にも吐き出すことができない。

 

この世界に、今の僕が「やりたい」と思えることは何もない。

 

居場所も、拠り所も、役割もない。

 

ただ、この世界にいるだけだ。

 

異端者として、視線を逸らされる存在として、誰の意識にも上がらないまま、時間だけがただ流れていく。

 

だけどそんな、何もなかった僕の前に、彼女が突然、現れたのだ。

 

そしてその瞬間、その存在が光のように感じられてしまったのは、僕にとって、彼女しか救いがなかったからなのかもしれない。

 

彼女は、最初から僕を、ただ「そこに存在しているもの」として扱った。

 

肩書きも、分類も、異端者という名前も関係なく、ただ、1人の人間として。

 

その瞬間、僕は初めて、僕としての存在が確定したような気がした。

 

彼女が、僕を意識に上げた、その瞬間に。

 

けれどそれは、本当に「生きている」と言える状態なのだろうか。

 

僕という存在は、何でできているのだろう。

 

父の息子。


誰かの部下。


役割。


肩書き。


関係性。

 

そうした縁起の束を結び合わせて、「僕」と呼んでいただけではなかったのか。

 

そしてそれらをすべて取り払ったとき、僕には何が残るのだろう。

 

役割を失った僕は、本当に、存在していると言えるのだろうか。

 

もしかすると、僕はこれまでずっと、存在と呼べる形を、与えられていなかったのかもしれない。

 

それを、彼女だけが、初めてすくい上げただけで。

 

だからなのだろう。


彼女に嫌われたくないと思ってしまうのは。

 

無意識に、尽くしてしまうのは。

 

それが性格によるものなのか

 

それとも、何かをしていなければ消えてしまうという恐怖から来るものなのか。

 

執着なのか。


依存なのか。


それ以上の何かなのか。

 

それすらもまだ、今の僕には分からない。

 

ただ、それでも。

 

この名前の付けられない“何か”は、確かに僕の中に芽生えている。

 

それは、ただ――彼女に会いたいと願ってしまうという形でしか、今は表せない。

 

ただ、彼女が来てくれる、その瞬間だけは確かに僕は、ここで、僕として存在している気がするのだ。

 

(第16話に続く)