5日目の朝も、いつも通りの時間に目を覚ます。
身支度を整え、庭に出て、いつも通りにプチトマトに水をやる。
『幸せの種』は、相変わらず土のままだ。
それでも、目を向けることが、もう習慣になっていた。
部屋に戻ると、ルカが足元をちょろちょろしている。
「セイくん、あそぼ」
特に理由はなかった。
ただ、今はそういう時間でもいいと思った。
「まずは食事をしてからな」
セイはそうルカに告げると、手早く朝食を準備する。
そして食事を済ませ、手際よく片づけを終えてから、セイはルカを連れて庭へ出た。
芝生の上に腰を下ろす。
ルカは周りを1周するように跳ね、少し離れてから、また戻ってくる。
追いかけるでもなく、見守るでもなく、同じ場所にいるだけ。
やがて、セイはそのまま仰向けに寝転んだ。
空は高く、雲がゆっくり流れている。
しばらくすると、ルカが勝手にセイの腹の上に乗ってきた。
「……重い」
そう思ったが、動かなかった。
拒むような重さではない。
むしろその重みが、今のセイには心地よく感じられた。
小さな体温が、じんわりと伝わってくる。
(空、こんなだったか)
風の音と、遠くの気配だけがあった。
気づけば、いつの間にか昼になっていた。
(……もうそんな時間か……)
そう思いながら、部屋に戻って簡単に昼食を済ませる。
そして食後は、決めている分だけ体を動かし、本を開いて、数ページ読む。
集中していたわけではないが、ページは進んだ。
夕方。
日が落ちる頃には、またいつものようにルカと自分の食事を用意し、美味しそうに食べるルカを眺めながら、温かな食事を口にする。
夜。
用事を済ませ部屋に戻ると、ルカはクッションの上で丸くなっていた。
セイはそんなルカをそっと眺めながら、ふと窓の外を見る。
(……今日も、何事もなく終わったな……)
そう考えながら、セイはベッドに入り、静かに目を閉じた。
(第116話に続く)