状況を把握するのに、それから数時間か経った気がする。
星夜は私の額にキスをした。
思い出して再び顔が熱くなる。
普通に考えたら、きっとこの返事は…。
って、星夜は普通じゃなかった…。

取り敢えず荷物を鞄にしまい、教室を後にした。

夜、布団に戻って目を瞑っても、やはりあの光景が胸を苦しくさせる。
恋ってこんなに苦しいものだったかな。
あの悪戯な表情と優しい口付けはまるで対称的で。

「…好き」

思わず呟いた。

次の日の事。
学校に行くと、さとねが親しげに神谷と話しているのを見掛けた。
柔らかい表情。
幼馴染みだって言えるぐらい仲が良い。

「おはよう、さとね」
「あっ、おはよ!ゆず!」

そのまま通りすぎようとした瞬間だった。
がしっと腕を掴まれた。

「俺にはねーのかよ?」
「…っ?!」

一瞬戸惑うが、溜め息をついて挨拶すると、腕は解放された。

私は、それをさとねが冷たい目で見ているとは気づく筈もなかった。

まちこは相変わらず星夜一本だった。
私なんかじゃ到底まちこには及ばないな、なんて思うと寂しくなった。

そんな日々に、春はもうすぐ終わりを告げる。
桜もだいぶ散ってしまい、梅雨が始まる季節になってきたのだ。

席に着くと、神谷は授業中、度々私の方を向いては話しかけてきた。

放課後も、星夜との対談は続いていた。
この前あったことはまるで無かったように。

梅雨入りと同時に、私の生活は徐々に暗がりに落ち始めるのだった。