「えっ....と...」

振り向いた先には星夜が居た。
相変わらず綺麗な姿で、ただそこに居るだけで温かい存在。

「佐崎さんは、いつも放課後、此処に居るの?」
「うっ、ううん!今日はちょっとボーッとしてたくてっ」

思わず緊張してしまって声が上擦る。
星夜はふふっと笑うと此方に歩み寄り、神谷の席に座った。
1つ1つの動きを見つめてしまう。

「ん?」

星夜が此方を見、首を傾げる。

「なっ、なんでも...!」
「そう?」

翡翠のような目がちらりと動く。
なんか変な気分だ。
何故か目が奪われてしまう。
そして、何故か懐かしい様な気がするのだ。

「星夜さんって」
「星夜でいいよ」
「っ...」

紳士のように微笑みながら此方を見ないでほしい..。
不覚にも胸がどきりとした。

「せっ..星夜って、前の学校でも人気だったの?」

星夜はきょとんとしながら私を見て、顔を少ししかめた。

「俺、学校、今日が初めてなんだよね」

んっ..?
それは可笑しい気がする。

「いきなり高校三年生って吃驚でしょ?でも家でちゃんと高校までの勉強はしてたから」

要するに通信教育で単位をとっていたと言うことだろう。

「5月に入ったらすぐにテストだよ?」

私は苦笑いしながら手をひらひらさせる。
でも、星夜はそれには返答をせず、私をじっと見つめてきた。

また、胸がとくんと脈打つ。
そんな綺麗な瞳に見つめられて、私はどうしたらいいんだろう。

やがて微笑むと、星夜はすっと立ち上がった。

「俺はそろそろ帰ろうかな、今日はどうも、佐崎さん」
「わっ、私も、ゆずでいい..から」

少し視線を外しながら私は言った。
星夜が吃驚した顔をして、すぐに優しく微笑みかける。

「そうだね、じゃぁ、また。ゆず」

教室から彼が去ったあと、私は胸がどきどきしてとても苦しかった。

最後に呼ばれた名前と、見つめてくる綺麗な瞳。

この、彼を思い出す度に胸がきゅっと苦しくて、温かくて、よく解らない感情に包まれていた。


続く