今年最大の話題作を電車で読んでいたところ、いつも乗っている路線にも係わらず人の流れに乗って違う改札口に到達してしまいました。
知っているけれど、見慣れぬ景色に「こ、ここは・・・200Q?」
ええ、たんに寝ぼけていただけですね。きんぎょです。

「絶対帰還」
先日、東京見物をしていたときに入った丸の内オアゾの中に、JAXAのブースが出来ていました。
国際宇宙ステーション、日本も参加していますね。この「絶対帰還」は宇宙ステーションが舞台のノンフィクションです。☆よっつ。
この作品に出てきた時代の宇宙ステーションはアメリカとロシア(当時はソ連ですね)のもの。
その互いの設計思想の違いが笑えます。
「無重力ではペンで字を書くことが出来ない!」
そうなったときアメリカは「宇宙空間でも書けるペンを膨大な予算を掛けて新開発する」という方法をとりますが、ロシアは「鉛筆を持っていく」ああ、なんてハラショーなんでしょう。
なんだかいい感じですよロシア。クルーのロシア人のおっちゃんもいいキャラクターです。
アメリカ人2名とロシア人1名の宇宙ステーション長期滞在クルーをいかに地球に戻すかがテーマの作品です。中学生くらいの男の子から読めると思いますが、このライターの人がロマンティックなのか。科学モノ・難プロジェクトモノと思って読んでいたら意外にポエトリー。女性にもお勧めできます。
宇宙トリビアとして、スペースシャトルで宇宙に向かうとき、アメリカ人クルーは紙オムツをつけて搭乗します。しかし。根性のロシア人は「数日絶食して浣腸する」という男気を発揮します。いや、そこは我慢しなくても・・・

「エンジェル・メイカー」
科学モノのノンフィクションの後は、事実を基にしたフィクションで。
舞台は第1次大戦中のハンガリー。小さな閉鎖的な村のお話ですが、いつの時代でもどこの場所でも起こる可能性のある事件を基にしています。
横溝正史が書いていたっておかしくないけれど、横溝正史じゃこのあきらめきった女たちが生気を取り戻す瞬間を理解して描けないだろうなぁ。☆三つ。
2008年に映画化される予定でしたが、メインキャストがヘレン・ミレンからシャーロット・ランプリングにかわって2010年公開予定のようです。

「九つめの緋色」
今度はうってかわって思いっきりフィクションで。ヴィクトリア期のロンドンとインドを舞台にした小説。シャーロック・ホームズのドラマを見ている限り、この時代のロンドンからインドを見たらそりゃぁ極彩色に見えたでしょうよ!と思えます。
現代のインドを舞台にした同じ翻訳者の作品も読みましたが、現代のほうがよりエネルギッシュになっているインド。植民地時代のマハラジャたちには極彩色の中に何が見えていたのでしょうね。
映画ハゲタカのコピーにもあった「金のある不幸と金のない不幸」という言葉も頭をよぎりました。
そういえば、映画スラムドック・ミリオネアの子役、ちゃんと学校に通わないと奨学金がストップされてしまいますよ。ちゃんと学校行こうぜい。
依然読んだ本の中に「ゴシックロマンとは女の子が自分の家を手に入れる物語だ」というのがあったのですが、この本でも主人公は自分のホームを手に入れることが出来ましたね。☆みっつ。

そうそう。翻訳者が集まって「翻訳ミステリー大賞」を設けるらしいです。翻訳ミステリー好きとしてはどんな作品が選ばれるのかとっても楽しみです。