夏休みの宿題の定番といえば読書感想文 ということで、夏の終わりに感想文ですよ。きんぎょです。


「イザベラ・バードの日本紀行」(上)(下)

1872年(明治11年 大久保利通が暗殺された年)に横浜に上陸して、日本縦断旅行にでたイギリス人女性の日本旅行記です。
もともと身体が弱くて転地療養をきっかけに旅行家になったという人なのですが、「文明国人のアテクシが未開の地で原住民を見るザマス」という目線ではなく、学術的に興味をもって日本を旅しています。

日本人でもあまり通らないコースで日光から新潟に向かい、秋田を通って最終的には蝦夷に向かいます。アイヌの村にも泊まっているんですよ。

明治という時代になって一般的な日本人がどうしていたのかということが窺われます。
「ここは外国人が聞いたことがある江戸という街ではなく東京という街になっている」という感想に、彼女が日本に来るほんの少し前の時代を描いた松井今朝子さんの小説「銀座開化おもかげ草子」の描写とも重なり興味深かったです。☆よっつ。


「スープ・オペラ」
社会のレポートにも国語の宿題にも使えそうな本を読んだ後は、気楽に読めるこの一冊。

TVでもおなじみ阿川佐和子さんの小説です。エッセイや壇ふみさんとの掛け合い漫才のような作品は読んだことがありましたが、小説ははじめて。ちょっとシニカルなところもありますが、TVでみかけたときに感じるものと同質の暖かさとかわいらしさがある作品です。☆よっつ。


「わたしを離さないで」
カズオ・イシグロの最新文庫本。前作の「充たされざる者」の暴力的な厚さではなく500ページ弱ですから、持ち歩くこともノー・プロブレム。でも中身の濃さと重さは「充たされざる者」以上かも。

狭い学校という世界だけがこの世のすべてだった頃の、友達との行き違い、和解、一人だけの秘密などが描かれている中に、潜んでいるモノが時々ちらりちらりと覗くのです。
読み進むにつれて潜んでいたものがどんどん表に出てくるのですが、その薄ら寒いこと。チームマイナス6%どころじゃないですよ。
今年も楽しい本やうっとりする本をいろいろ見つけましたが、衝撃はこの本が今のところナンバー1です。
☆いつつ。