昨日今日と、ナミヘーが忘年会です。家を出ようとするたびに「鍵持ったか?」と聞かれるのは、寒空に妻がさらされるということよりも、心置きなく二次会・三次会を楽しみたいという心がけのような。
きんぎょです。
「匂いたつ官能の都」
デリー在住ですが、ヨーロッパに住んでいたこともあるというインド人女性ラディカ・ジャの作品です。香水のゲラン社が贈るゲラン賞を受賞した作品。
インド在住経験のないインド人の若い女性が主人公です。しかるべき大きさにすりつぶされ、しかるべきタイミングで加熱され広がるスパイスの香りの描写がすばらしいです。さすが、インド。ひとつずつ追いかけていたつもりだったのに、途中からワタシの頭の中では全部まとめて「カレーの匂い」になってしまうんですけどね。
「匂い」をテーマというと「香水ある人殺しの物語」もにおいがテーマですが、作者の性別なのか、東洋と西洋の違いなのか、同じような匂いの持つ官能性を扱っても違うものですね。☆三つ半。
「停電の夜に」
ロンドンに生まれ子供の頃にアメリカに移住したインド人女性ジュンパ・ラヒリの作品です。ピュリッツァー賞を受賞した短編集で、著者近影を見るとちょっとびっくりするくらいの美人です。
インドといってもこの人の一族はカルカッタ近辺のベンガル地方のひとです。この短編集の中でもバングラデシュ独立のエピソードがあったので、ベンガル地方というのを調べてみると、日本ハムファイターズにベンガル人と日本人のハーフの選手がいるんですね。名前の由来に算数が入っていたのを見て「さすがインド」と思ってしまった算数オンチのわたし。☆三つ半。最後の作品が一番好きでした。
「その何ちなんで」
「停電の夜に」の作者の初長編ですが、来週映画が公開されます。
結婚し、夫についてアメリカに出てきたインド人妻の視点で始まります。習慣の違い、手に入らない食材、同じ言葉で話す同胞の不在、故郷の家族との連絡はなかなか届かない手紙のみ。転勤族の妻と重なります。
途中から息子の視点で話は進みますが、息子はアメリカ人なんですよ。ベンガル語は話せても、書けない。クリスマスも感謝祭も祝いたい、インド音楽よりもロックを愛し、18歳になったら実家を出てしまう。
それでもいつしか「かっこ悪い、ちょっと恥ずかしい」と思っていた親がアメリカにコミュニティを築き、自分達のためにしてくれていたことなどを実感するようになるのです。
クリスマス、お正月と「家族・田舎」を実感する季節に読むにはぴったりです。☆よっつ。