10年前のあの日。


漢字の読み間違えと欄の読み間違えの偶然で出会った。


私はまだ学生、あなたは先生。



夏休みも終わりに近づいたあの日、
必然的に入手したあなたの電話番号。


何度もかけようと思ったけど、なかなか勇気が出なかった。



本当はあなたを追いかけていたのは私じゃない。
あなたの先輩です。
そして私が追いかけていたのはあなたの同僚です。



そう打ち明ければ、この恋は始まらなかったはず・・・。


そうできなかったのは、私の弱さ。


心のどこかで分かっていた。


あなたのことも彼のことも、両方を手に入れたかったのだ。


と、大人になってから知った。


現在も過去も、きっとこの先だって私はズルイ人間だ。





ひとは傷つくことを極端に嫌う種類の動物だと思う。


彼とは家が近かったので、買い物などでよく顔を合わせることがあった。


私は一人で、彼はいつも女性と一緒だった。


その姿を見てもなんとも思わなかった。


だっていつものことで、隣にいる女性はいつも違っていた。


彼は臆病な人間で、自分のテリトリーに人を入れない。


友人に対しても心を許せるのは数人だった。


彼は心を許した人間に対して、ひどく干渉する。


そして必要以上に疑心暗鬼になり、独りになる時間を必ず作る。





20歳の夏。


彼が近所に引っ越してきたことを、彼の友人から聞いた。


それから時間を空けずに彼から連絡があった。


「ご飯食べない?」


友人も一緒だと聞いたので誘いを受けることにした。



迎えに来てくれた友人は「いいの?」と聞くので、私は首を傾げてしまった。


だって二年も前に、私は捨てられたのだから。




今思うとなぜ、捨てられたのだろうか・・・。


2年前の彼はこう言った。


「これ以上は無理。」


この言葉以降、口を開かなかった。



もしかすると、彼の母校へ進学したほうがよかったのだろうか?


私は執着しなさ過ぎたのだろうか。




後ろのCDプレイヤーからドリカムの曲が流れていた。


ただただ電話を待った。


当時はポケベルが主流だった。


切ない気持ちが一層濃くなって、なんだか泣けてきてしまう。


そんな時間を幾度となく過ごしてきた。




---つづく