「え~~!それって以心伝心とかあるかもよ。一度、連絡してみようよ。連絡先は消してなんでしょ。」

 

「まだ、残してるけど、連絡しなくなってもう10年以上は経ってるし……。」

 

「まあね、でも気を張らずに連絡してみれば。意外と時間なんて簡単に超えられるかもよ。」

 

「そっかな……。」

 

会社帰り恵美とパスタを食べながらそんな会話をした。

なんか嬉しかった。

心がワクワクしているのが分かる。

パスタはわかるけどなんとなく小難しいメニューの名前はわからないし、なんとなく美味しい気がするとしか印象がない。

多分、自分と恵美の繰り出す言葉に夢中なせいなんだろうな。

やっぱり私は大樹といるのが幸せなのかなもしれない。

 

そんな気分のいいディナーの帰り、なんとなくスマホの連絡先から「大樹」という登録を見つけた。

何度か表示しては閉じるを繰り返し、家の前まで来てしまった。

 

「ただいま、リュウ」

 

「にゃ~」

 

リュウとは冷戦状態が続ているが、最近、大樹のことが気になってしつこくしないせいか、リュウは安心して近くまで来るようになった。

ソファに座れば横に座ってくる。

それ以上は近づいてこないけど、それでも彼なりに接点を見つけようとしてくれているのかもしれない。

 

そんなリュウの側で何度か表示した連絡先に思い切って電話をかけた。

電話番号は変わってなかったようでコールの音がする。

以前、大樹と電話するときには感じなかった緊張感。

8回目のコールでつながった。

 

 

「もしもし」

 

懐かしい声がした。