高校時代に2年ぐらい付き合っていた大樹
付き合っていたといっても一緒に学校から帰って休みには地元からちょっと離れた映画館でアクション映画を観に行ったぐらいだったけど閉鎖感漂う地域の二人にとってはかなり目立っていた。
なにせ地域全体が親族のような街で手をつないで歩いていれば、親戚の中には「ハシタナイ」と感じる人もいて母に忠告に来る人もいた。
今、考えるとそんな視線を吹き飛ばすほど大樹が好きだったのかわかない。
ただ、そんな周囲に反抗しているような自分が好きだったのかも。
そんな関係だから大学で東京に出てきて2年もすれば連絡もしなくなっていた。
家から通える大学に進学した大樹から「東京は楽しそうだね」とメッセージが来たのが最後で大樹からも連絡がなくなった。
優しかった大樹……
付き合い始めて半年ぐらいたった時、
一緒に歩いていると道に子猫がいて私が抱き上げようとすると私の手をひっかいて逃げてしまった。
その時、公園の水道で手を洗い優しく傷口をおさえてくれた。
血も出ないようなたいした傷じゃなかったけど、私の手を包む大樹の手から優しさが私の面倒な反抗心が和らいでいくような時間だった。
大樹は何にもとらわれることなく素直に暖かい気持ちを向けられる人だった。
その日、夕方の公園でそっとキスをした……