それから私とリュウの日々が変わった。

 

お昼休みや通勤の電車の中で最初はねこや犬がしゃべったり歌ったりしたように聞こえるあらゆる動画を視聴して学習

 

「おはよう」

 

リュウは喉をゴロゴロさせながらスリスリしてくる。

 

「リュウ、おはよう」

 

「ゴロゴロゴロゴロ」

 

「ほら、リュウ、お・は・よ・う」

 

「??」

 

「お」

 

「??」

 

「お!!」

 

「ゴロゴロゴロ」

 

「お!!!」

 

「・・・・」

 

リュウと話ができたと感じてから一週間、毎日家に帰ると少なくとも1時間は繰り返した。

10日ぐらいたったある日…

 

「リュウ、おはよう」

 

「・・・・」

 

「リュウ、お!!!」

 

リュウを抱え上げてユサユサと揺すった。

 

「”お”ぐらいちゃんとじゃなくても、話せるようになれっっ!」

 

今、考えるとリュウにとっては不条理な怒りをぶつけられているだけなのに、その時は全く気付かないまま、イライラだけが膨らんできた。

 

「!!!!」

 

リュウが体をよじって私の手から飛び降りて自分の部屋に入ってしまった。

 

「あ、こらっ、リュウ!」

 

部屋の中からジッとこちらを見ている。

リュウとの間に明らかに小さなヒビができた瞬間だった。

私は知らなかった。

小さいヒビでもあらゆるところに広がっていくことを…。