気づくと、病室の窓を、大粒の雨が叩いていた。

心配ないと言われたけれど
胸がつぶれそうだ。

目を閉じたままの彼女の耳元で、

奈緒が好きだと言った曲を歌った。
少し前に歌って聞かせたら、

すごくいいと誉めてくれた。
そのときの笑顔を思い出す

奈緒起きて。お願いだから

雨のなかで、別れたひとを思う、

終わった恋を追いかける。

そんな歌だ 。何度も歌い続けて、

いつしか涙で、声が、出せなくなった。

そのとき、
握っていた指が、

握り返してきたような感覚があった。

「勝手に、終わらせないでよ」

…奈緒?