Introduction of Castelnuovo-Tedesco⑥

職場の前にあるプチ公園にはセミの鳴き声。海水浴と同じ強い日差しが空から降り注ぐ。

この時期には、黒木監督などの映画シーンがよみがえる。あのときの日々の想いと記憶のこと。

 

自分が体験していない、あの遠い昔の出来事8/15に想いが行く、体験もないのに。

でも身近な両親の思い出話や母が書き残した女学校の文集「戦時中のこと」(?)は忘れられない。学徒動員で郡山にあった工場から阿武隈川まで逃げたこと、さらに同級生が焼夷弾の犠牲になった目の前の惨事。母のリアルな「語り」の記憶と「コトバ」だけしか残されていないその文集。

毎年、8月になるとメディアなどが様々な角度から戦争にまつわることが報道される。アメ-バブログの数々、7日のNHKTVにも

触発されて急遽書き始めることとなった。

 

今回は、当時にアメリカの第一戦で活躍していた作曲家仲間たちが終戦前後に共同で書いた「創世記組曲」(1945年)の話である。

テデスコ紹介⑤にちらほら出て来た、Westby,Jamesは「作曲家の遺品を調査していたら、凄く大きな発見をした。」と囃し立てた。

      Genesis Suite「創世記組曲」

 

genesissuite

 

 

 

     推理小説まがいの出来事
音楽学者Westby,James は、1990年代初頭、、自分の博士論文の題材・資料を求めて、たまたまカステルヌオーボ=テデスコの遺族が保管する資料庫を調査していると、「創世記組曲」の楽章の一つとしてテデスコが書いた「The Flood」(ノアの箱舟)の楽譜に出くわした。 その資料漁りの成果は彼の博士論文として世に出て、一躍テデスコ研究の第一人者ととして地位を確立した。

さらに「創世記組曲」の再演奏とCD発売にもつながった。
Castelnuovo-Tedesco in America: The Film Music. Ph.D., Music, University of California at Los Angeles, 1994. 2

James Westbyが驚いたことは、実在しないはずの楽譜が安々と発見したことであった。さらに他の作曲家の遺族の資料庫を幾つか探索したが、トッチ家のものとフランスで制作されたミヨーの楽譜「カインとアベル」は所在不明。 残りの作品もすべて調べあげたようだ。

彼は1993年、カステルヌオーボテデスコの遺族とともに「The Flood」の著作権を更新する手続きを行う。その際に知ったことは、1945年のオリジナル版の著作権については、この「創世記組曲」を企画発案したNathaniel Shilkretに帰属されること。またwestbyが継続して調べると、 1940年代の米国の著作権法では、それぞれの著作権はスコアの断片でもオリジナル版の楽譜に帰属されると定められていることが分かった。

westbyは胸に浮んだ。 もしShilkretがテデスコの作品の著作権を保有しているなら、 更にこれと同様にすべての7つの作品も彼にその権利が帰属することになってしまうことになるはずと。
米国著作権局の記録を精査したところ westbyの予想は大当たりであった。確かに、統合された楽譜に入っている、すべての7つ作品「創世記組曲」の著作権はShilkretにある。それらの作品は1冊の「組曲」にまとめられていたからだ。
           

*この最重要参考人は、音楽研究だけでなく、ニューヨークタイム誌にも宣伝するなどジャナリストの才覚もある。法律にも明るくビジネスにも長けているようである。              
 
         創世記組曲の初演
(日 時)1945年11月18日
(会 場) the Wilshire-Ebell Theater
(指 揮) Werner Janssen
(演 奏) ヤンセン交響楽団  エドワード・アーノルド(語り)

①Arnold Schoemberg:Prelude

          (シェーンベルク:前奏曲)
Nathaniel Shilkret:Creation

          (シルクレット:天地創造)

③Alexandre Tansman: Adam and Eve

          (タンスマン:アダムとイブ)
④Darius Milhaud: Cain and Abel 

          (ミヨー:カインとアベル)
⑤Mario Castelnuovo-Tedesco:The Flood(Noah's Ark)

          (テデスコ:大洪水<ノアの箱舟>)
⑥Ernst Toch:The Covenant (The Rainbow)

          (トッチ:誓約<虹>)
⑦Igor Stravinsky:Babel 

          (ストラヴィンスキー:カンタータ『バベル』)
 

      作品の概要

 

 

「創世記組曲」は、第二次世界大戦時にヨーロッパからアメリカに避難をしていた、アメリカ西海岸在住の著名な作曲家を中心に、音楽と語りで旧約聖書の世界を展開していくというドラマティックなプロジェクト。かつて米RCAとキャピトルの録音があったものの、今回の録音は紛失していた自筆スコアが見つかるなどして、初めてその全貌が明らかになったもの。作曲の経過、曲目の解説などは充実している。、NAXOSのミルケン・アーカイヴ(アメリカのユダヤ系音楽財団)の貴重な記録である。
7名の作曲家のコラボレーションによる作品は、聖書の創世記を題材にしたものであり、音楽と合唱、ナレーションによるもので、1945年に一度だけ演奏された。
この録音は、その後著作権を保持しているNathaniel Shilkretの家屋の火事により当時のスコアが消失していたので7曲中3曲はPatrick Russが再構成したもの。新発見のオリジナル手稿譜をもとにした改訂版による世界初録音である。管弦楽と合唱が織り成す色彩的で起伏に富んだ音楽に、詩に合わせて5人のナレイターの語りが入る。この音楽は、それぞれの作曲家のユニークな個性が出ている独立した作品が集合してさらに非常に劇性の強いスケールの大きな作品に仕上がっている。

 

 

     大洪水のストリー
主なる神ヤハウェは地上の人々の悪業を見て、これを洪水で滅ぼすとノアに天使ウリエルを通じて告げ、ノアに箱舟の建設を命じた。ノアは大洪水が来ることを人々に知らせたが、それに耳を傾ける者はいなかった。

 

ノアは箱舟を完成させ、すべての動物のつがいを箱舟に乗せた。洪水は地上に生きていたものを滅ぼしつくした。
ノアは祭壇を築き、焼き尽くす生け贄を神に捧げた。神はこれに対して、ノアたちを祝福し全ての生きとし生ける物を絶滅させてしまうような大洪水は、決して起こさない事を契約した。その契約の証として、空に虹をかけたという。

 

 

     捜査はまだ続く

 

重要参考人とはまだコンタクトがとれない。こんなにもブログでカキコしても名乗りでてこない。彼の知り合いでもこれを読んでいたら、「早く公の場にでて弁解すべきことがあれば正直に証言しなさい」と諭して欲しい。

 

新テデスコのカタログ

                   James Westby著


                      *すべてイタリア語の本

 

 

 

 <お詫び>

 

45年当時、日米関係と戦争に対する、この7人組の心象・理解がどのようなものだったか?本当は言及したかった。その技量・粘りがなく中断することとした。

 

<追記08.08.09>

 Nathaniel Shilkret氏が発案した「Genesis Suite」プロジェックトは、どうも聖書を題材とした楽曲を作曲者たちのコラボによって製作したかったようだ。戦争の悲惨さ・愚かさなどを音楽にすることが製作の第一目的はなかったようである。ただ、戦争の被害・影響は、この7人組を含むすべての米市民の行動に大なり小なり影を落としてはずと思いたい。終戦後、生活が落ち着いて、45年の後半に新作のお披露目になったのだろう。