姉妹は上海出身。地震のあった1995年当時は、姉の伍鳴さんと西宮市甲子園口にある古民家に住んでいた。
京都大学を卒業後、商社で働いていた姉。9歳から古箏を始め、プロ奏者を夢見ていた妹。生死を分けたのは偶然でしかなかった。
あの朝、友人とスキーに行き、神戸・北野の友人宅にいた伍芳さん。5時間後、西宮に駆け付けると、姉は全壊した自宅で息を引き取っていた。
失意の底から伍芳さんを救ったのは、がれきの下から見つかった古箏だった。姉への思いを曲に託し、発表してきた。今年でデビュー15周年を迎え、10枚目のアルバムを12月に発売する。
昨年末、大阪の制作会社から、ミュージカルの話を持ちかけられたときは迷った。「悲しみは今も変わらない。姉を思い出すことに耐えられるかどうか」。だが、一歩を踏み出そうと決めた。
脚本は映画監督の塩屋俊さんが担当。4人の役者が震災前後の日々を演じ、伍芳さんが「姉への手紙」「光の中へ」など4曲を演奏する。
舞台では、天国の姉から、聞こえてきた伍芳さんへのメッセージが再現される。
「あなたは生かされた。だから、あなたと同じ境遇の人たちの悲しみを、痛みを、あなたの古箏で癒やしてほしいのです。私は今もあなたに寄りそい、あなたの奏でる琴線の響きに耳をそばだてています」