先月あった出来事について、記そうと思います。
取り乱さずに書けるか些か不安はありますが、まあ大丈夫でしょう。
一応気持ちに整理はついたつもりです。
逆にそうでなくては、もう生きていけないから。
仕事の話です。
ある日、出勤前に店長のザキヤマ(山﨑)から電話がありました。シフトにどうしても入ってくれ、というものです。あたしはちょっと怒りながら、了承しました。
「誰の代わりですか?」
「○○くん。なんか囲碁の大会があるらしい」
「囲碁!?」
あいつ、ヒカル?
「3週間も大会があるらしい」
「は?」
「だからずっと出れないんだって」
「ザキさん、それ絶対騙されてるよ!」
「世界大会なのかな」
「そんなわけない!」
「でも、そうやって言ってたよ」
「いやいや、まさか…」
「だから出てね」
「わ、わかりましたよ…(ざけんな…)」
ヒカルめ…。
しかし、3週間も続く大会があるかよ? 北斗杯? 北斗杯なの?
北斗杯ってそんな長くないよ?
彼はプロ棋士? 若獅子戦??
いずれにせよ、正気の沙汰ではない。
いや、囲碁の世界はわかりません。
和谷くんがイケメンなのはわかりますが、もしかしたら大会は長引くのかもしれませんね。
囲碁は奥深い娯楽だから。
だから囲碁は許しました。
しかし、許せないことが。
そう。
その囲碁男は非常にブサイクな男なのです。
ヒカルじゃない。
ふざけてる。
怒りが沸いてきます。
あたしはね、ブサイクな男が嫌いなんです。
ブサイク囲碁男に対して超イライラしながらザキと話をしていたら、ザキが「あ、そいえばさ」と言いました。
ちなみにザキはゴールデンボンバーの歌広場淳に似ています。
「あのさ、リス男くん、辞めたんだけどさ」
……なに?
「は?」
「辞めたんだ、彼」
「ちょっと待って、え?」
このとき、本当に頭がおかしくなりました。
全然ザキの言ってる言葉の意味が、さっぱりわからないのです。
あたしとよく電話している人はわかると思いますが、あたしはよく通話中に消音ボタンを押してしまいます。ほっぺで。
だから、消音だと思ったの。
確認しちゃった。
でもね、消音じゃなかった。
めっちゃ聞こえた。
幻聴かな? とも思った。
違った。もうね、全部が違う。
全部が違うけど、正しいことでした。
「な、なんで…」
声が震えてしまいました。
自分の子供に、人を殺したよ、と告白された親みたいな気分でした。
子供がいないあたしが言うんだから間違いないよ。
「キツかったんじゃない?」
「ザキさん、リス男に怒ったりしたの!?」
「いや、してないけどさ。だけど、まあ、思うことがあったんじゃないの」
キツかったなんて、あの閑古鳥鳴きまくりの店でなにがキツいの?
しかもリス男はバスケもサッカーもラグビーもやってたよね?
体力とか、あるよね?
てかそもそも、そんな店じゃないけどね?
意味わかんないよ。
意味、わかんないよ。
リス男のばか。ばかのリス男。
はい、
山手線ゲーーーーームッ!!
いぇーーーーっ!!
お題は、ばかの名前!
いぇーーーーっ!!
じゃあいくよ?
せーの、ぱんぱん、リス男♪
ぱんぱん、リス男♪
ぱんぱん、リス男♪
ぱんぱん、リス男♪
…
……
………
それから電話を切り(記憶無い)、あたしはめちゃショックで、死ぬかと思いました。死のうとしました。
死んでしまう以外にないと思いました。
手首を切ろうとしました。手首を切って、鏡に血で「リス男、永遠ニ、愛ス」と書いて、浴槽に半身を沈めようとしました。
でも、カッター錆びてた。
それは、怖かった。
傷口からばい菌が入る恐れがあるな、と思った。
膿んじゃう気がした。
だからやめた。
その電話が来たあと、信じられないことにシフトが入っていたので、檄!落込華撃団になりながら行きました。唸れ、高速の。
店にはもう、ザキはいませんでした。数十分のうちに帰宅していました。彼女とデートらしいのです。歌広場淳だから仕方ないかな、と思います。
毎週その日、早口オタク(男)と一緒に働かなくてはなりません。
あたしはその早口オタク男とあまりそりが合わないので、なるべく関わりたくないのですが、早口オタク男はやけにあたしに突っかかってきます。真面目すぎるのです、彼は。理系です。根本的な頭の作り、考え方がかなり違うのだと思います。
だからあたしたちは非常に熾烈な争い繰り広げ、物を投げ、やがては殴り合いをし、血のついた指で客に釣り銭を渡します。
しかし残念のことに、今週のあたしはそんな元気はありませんでした。
なぜなら最愛のリス男がバイトを辞めたからです。
だからバックヤードで、早口オタク男に、「今日は仲良くしよう」とあたしは予め言いました。
早口オタク男は了承しました。
なので、はじめは仲良かった。
相談して仕事を分担したりした。
それはまさに、阿吽の呼吸であった。
篠田麻里子と小嶋陽菜であった。
しかし次第に2人してわがままになりはじめた。
あたしは楽をしたい。
彼は仕事をしたい。
一見上手くいきそうですよね?
でも、彼はあたしを巻き込みますから、結果として楽ができない。
楽ができないとあたしはイライラします。
なので結果、無理でした。
ちっとも仲良くなれない。
まず、早口オタク男、日本語を話さない。
彼は、なんか、ぺぺぺぺーーっ!みたく話すのです。
さくらんぼの種飛ばし大会にでも出場しているのかな? と思います。
早口オタクが何かをあたしに言うのですが、早口すぎて、さくらんぼの種を飛ばしすぎて、何を言っているのかがさっぱりわからない。
だから適当に返事をし、あしらうと、早口オタクが何やら怒っている。ぺぺぺーっ!
どうやら、なにかをあたしにやってほしかったらしい。
でもあたしは種飛ばし語が理解できない。
同じオタクなのに、意思疎通できない。
つらい。
かなしい。
ほんとは楽しい、おいしい嬉しいギャラクシー。
(↑ラップです。)
そんなこんなで彼とバトりながらも、あたしはリス男のことを考えていました。
エジソンの少年期のように、あたしはなぜなぜ坊やでした。
なぜリス男は辞めたの? なぜ? なぜ??
店で、ママと一緒に来ていた小さな女の子が「ママー、なむなむ。ママー、なむなむ」と延々とママに言っていました。
ママなむなむってなんですか?
とても怖かったです。
勤務を終え、帰宅し、夜中にエビ中のライブブルーレイなどを観ました。
真夜中にジャイアントコーンを食べたりしました。
しかし、紛らわせることは出来ませんでした。
眠れませんでした。
本当に悲しくて。
今だによくわからないのです。
彼が辞めてしまった、という事実の意味が。
事実に意味などあるのでしょうか?
…もちろん、事実に意味はあります。
では、事実が事実であることに意味はあるのでしょうか?
事実を事実として”受け止め”、事実だからと”信じ”、事実だから”諦める”?
人間は単純だ。
しかし、どんな屁理屈を言ったところで、事実が覆ることはありません。
何万年も前から、事実は事実として受け入れるべきです。
自分への戒めの為に、何度も言います。
『彼は辞めた』のです。
理由はどうあれ、辞めてしまったんだもの。
泣いても帰らないわよ。無駄よ。
……ねえ、だから今日だけは、歌わせて。
忘れられない男に向けた、馬鹿な女の独り言よ。
例えるなら色は、…そうね、このグラスの向こう側。歪んで見える仄かな、青…。
(歌う)
……ふふ、馬鹿ね。
独り言と言ったはずよ。
拍手なんて、虚しくなるだけ。
それよりカクテルを頂戴。
甘くて、思い切り、強いやつをね…。。。
よく、リス男の話をみなさんにすると、「要するに瀬尾はリス男と付き合いたいの?」と尋ねられます。
一言で、お答えいたします。
違います。
むしろ、
ちげえよばか!!!!!
あのね、そういうんじゃないの。
わかる?
そんな下劣な感情だけであたしはリス男を愛していないから。
もう、リス男はリス男なのです。
むしろあたしは、リス男の彼女と仲良くなりたい感じです。リス男に彼女、いないらしいですけど。
かわいいんですよ、彼は。
本当にかわいいんですよ。
なんというか、癒しなんですよ。
彼はアイドルですから、付き合うとか、そういう恋愛感情が芽生えることはなく、とっても格好がよくて、かわいくて、ステキなんです。
見ているだけで幸せで、この世に存在している、と考えるだけで嬉しくなるような、そんな存在。
だから、リス男には幸せになってほしいんです。
それも、並大抵の幸せではありません。
本当に、大きな幸せです。
肩にリスを乗せていそうな、リス男。
動物と会話ができそうな、リス男。
ウサギが彼女の、リス男。
なんとかバリアリーフに行き、日光に目を細める、リス男。
オーストラリアでストリートバスケをする、リス男etc...
言わずもがな、これらは全て妄想です。
紛れもなく妄想です。事実など、皆無です。全てがイメージ。あたしが思い描く完璧なる理想。
リス男はあたしの理想の中に生きていました。
しかし、理想だけではなく、リス男は本当に存在するのです。
血肉が蠢き、鼓動が走り、瑞々しい命を迸らせた、溌剌とした、れっきとした、人間なのです。
近頃はめっきりシフトがかぶらなくて、あたしは息が詰まりそうになっていました。
シフトが合わなければ、当然同じ店にいても顔を合わせることはありません。
なので実は、その絶望日の前日、つまりリス男がシフトに入っていた日に、あたしは店に遊びに行っていたのです。
え? ストーカーなの?
いや、それは違うと思います。
リス男に会うためにだけに行きました。
え? それはストーカーなの?
ストーカーかな?
ストーカーかも、しれません。
あわよくば、ハロウィンの帽子をかぶってる姿を拝めたら、路上でまっさらブルージーンズを踊ろうと思っていました。
しかし、店外から覗くと、リス男は帽子をかぶっていませんでした。
なーんだ、と思い、店の中には入らずに、遠目にリス男を見て、あたしは帰りました。リス男、がんばってるな。そのうちまた、一緒に働けたらいいな。
そんな風なことを、あたしは考えました。
そして翌日。即ち、ザキから絶望的なことを告げられた絶望日。
あたしは、なんてバカなことをしたのだろう。
単純に、真っ先に、昨日の自分を責めました。
あのとき声をかけていたら。
リス男と話していたなら。
この気持ちも、少しはマシだったかもしれない。
なんでよりによって、見ちゃったんだろう。
見なければ、忘れてた。
顔とか、佇まいとか。
リス男は、本当にあたしの理想の中だけの存在になりかけていた。
だけど、確認してしまった。
見てしまった。
あたしは、また、リス男の存在を。
だから、…。
今考えたら、何かのしらせだったのかもしれない。
だって、いきなり思い立ったんです。
ちょっと行ってみようかな、って。
あたしの行動や言動ひとつで、彼の意思を変えられるとは思いません。
たとえ、あのときに「最近どう?」と訊いてみたところで、彼は笑って「うーん、まあまあです」と曖昧に答えるだけでしょう。
だから、それは大したことではありません 。
あたしにとって大したことがあるのは、あたし自身のショックです。
悲しみの質量です。濃度です。
散々色々述べました。
ぐだぐだと、わけのわからない話ばかりをしました。
要するに、あたしが最も悲しいこと。
最も辛いこと。
そして、最も後悔していること。
それは、
リス男に「さよなら」を言えなかったことです。
これに尽きます。
むしろ、これ以外に無い。
リス男のこと、あたしはほんとに何にも知らないんです。
だけど、レジで小さな紙に書き物をしている姿がすごく好きだった。
長い背骨を丸めているのが、かわいくて大好きだった。
本当に短い期間だったけど、リス男のファンになれて、楽しかったです。とても、嬉しかったです。
あなたにずっと訊きたかったことが、とうとう訊けませんでした。
動物は、好きですか? という、くだらない質問です。
答えを知ることは、金輪際無いでしょう。
悲しいよ。悲しいよ。
あたしの中の、リス男を好きだったあたしは、もう、死にました。
もう会うことは、きっとないと思います。
そしていつか、忘れてしまうと思います。
嫌だけど、リス男の存在を、あたしは忘れてしまうと思います。
だから、今。忘れない、今。
リス男の幸せを、強く強く祈ります。
リス男くん、どうか幸せになって。
それは、並大抵の幸せではありません。
それは本当に、本当に、大きな幸せです。
13.11.08 瀬尾
追記
改めて、ザキに聞きました。
「リス男を止めなかったの?」と。
「別に止めないよ。特別仕事がデキる、ってわけでもなかったしね」
彼もまた、男でした。
しかし、この二週間後にザキヤマは仕事をばっくれました。
世の中の男はどいつもこいつも本当に信頼ならないな、と思い、あたしは私立恵比寿中学の曲を聴くなどしています。