バッティングセンター通いをライフワークとしている
中年スイッチヒッターです。




バッティングセンターによく行く人も、初めて来た人も

打ってるうちに自分の打ちやすい
“お気に入りの打席” が見つかると思う。




先日、いつも行くバッティングセンターで
20代半ばくらいの黒髪女子が
かれこれ1時間以上
120キロの右打席から出てこない。

彼女はずっと打ち続けるんじゃなくて
1ゲームやっては


・マシン室の奥を見つめて立ち尽くす
・スマホをいじる
・隣の人の打つ様子を観察する
・何度も膝を抱えては長いことうずくまる


こういったことを繰り返し
一向に打席から出てこないのだった。


膝を抱えてうずくまるとか
普通ではなさそうだが大丈夫なのか。

ホストにでも失恋したか。

※周辺が歓楽街



実はわたしもその打席で打ちたくて
時に順番を待ってみるんだけど

ガラスドア越しに目が合っても
彼女は交代してくれるそぶりを1ミリたりとも見せないので

しびれを切らして
ゲーム終わりのタイミングで話しかけてみる。


「次、交代してもらえませんか?」







「え? あ、アノーん、ンー、、」


相手は困惑した表情で
日本語がかなりたどたどしい。

な、なるほど…

そこで今度は身振り手振りを加えて
ゆっくり日本語を話すようにした。


「わたしもそこで打ちたいです。代わってください」


そしたら彼女から驚きのひと言が。


「あ、エート、◯時からでダイジョーブですか?」




◯時とは、今から30分後である。

つまり、まだ30分は
この打席から出たくないという意味だった。

いや大丈夫じゃねぇわ!!

30分したら、わたしも帰る時間。






「や、ダイジョーブじゃない。
あなたも打ちたいのはわかります。
でも、わたしもそこで打ちたいし。それに…」


と、喉まで出かかった続く言葉を何とか飲み込んだ。

「あっちにスピードの遅いマシンがあるよ」ってせりふを。



彼女は明らかに野球経験がなく(わたしもだけど)
1ゲーム25球のすべてを振り遅れで空振りする。

それを何ゲームも何ゲームも繰り返していた。

でもそれは余計なお世話だと、すぐに思い直したからだ。


こだわりの強い人かもしれない。

120キロをどうしても打ち返したいという
諦めない気持ちの表れかも知れない。

お金を払って素振りしに来てるセレブかもしれない。



ただ、おそらくいちばん可能性が高いのは

単に日本のマナーや
店のルールを理解していないのだろうと。

打席は貸し切りシステムじゃないんだよって
がんばって説明したら、ようやく交代してくれた。



それはよかったんだが、しかし
先ほど彼女からカタコトで言われたあの言葉

『◯時からでダイジョーブですか?』

が、ちらちらと頭をよぎり
どうしても、その後の打席内で思い出し笑いしてしまう。


もうまるで悪気なく言うもんだから
腹立つどころか脱力したよね。