小売店のレジ打ちをしている中年フリーターです。



先日、数年前に退職したバイト仲間が買い物に来たらしい。

たまに店に顔を出しては笑顔で帰ってゆく、この元同僚を
わたしが素敵だなと思うのは



会社と揉めて退職したのに
そんな元職場にあっけらかんと元気に顔を出すところ。



揉めた理由は、当時20代だった彼女の髪型。

黒髪のツーブロック。


社内の頭髪規定には違反していないし
今まで会社から指摘されたこともなかったのに

ある日来店した高齢ご夫婦客の夫(おじいちゃん)が
レジに立つ彼女を見るなりブチギレ。


「なんだあの髪型は!!!!!」


隣にいる妻がなだめたところで
怒りと興奮はおさまらなかったらしい。


そのおじいちゃんから改めて
髪型に対するクレームの電話が店にかかってきたことで

管理職ら(全員男性)が話し合った結果
今後はツーブロをやめてゆくように
今出ている刈り上げ箇所は
髪の長い部分でうまく隠すよう指導

それを受け入れられない彼女が反発する形でバイトを辞めた。



反発した理由のひとつに
若い男性社員の中にツーブロックの者がいたことがある。


「なぜ男性はよくて女性はだめなんですか?」


何度聞いても明確な答えはもらえず

会社はたったひとりの客の意見を聞き入れ
従業員のことは守ってくれないんだって
もういいやって失望して辞めてった。



普段から接客がとてもよかった彼女が
まさかこんなくだらないことで退職に追いやられるなんてと

やりきれない思いでいたことを
わたしは今でも強烈に覚えている。






そんな残念な辞めかたをしたにもかかわらず
彼女は退職後、少し経った頃から買い物にやってきて

まるで何事もなかったかのように
顔を知ってる従業員たちと談笑できるのは、やはりすごい。

当時の管理職の人間が、もういないとはいえ。


これが自分だったら
陰湿な性格ゆえ嫌な記憶を長く引きずり
職場には二度と近寄らない可能性が高い。

なので元同僚の、そのからっとした性格は羨ましく
少しでいいから近づきたいと思う。




あの出来事から、たぶん5年くらいが経つ。


現在、中年以降の従業員率が9割ほどとなったこの職場にて

ツーブロや例えば男性のピアスなど
おしゃれの冒険をしようと考える人間は、いないっぽい。