愚痴になります。
そして今回も難しい内容ですみません。
昔、帝王切開の話をしながら
韓国医療の『包括払い方式(Diagnosis-related group=DRG)』という保険制度について
チョッピリお話しをした事がありました。
入院から手術、退院までの値段が最初から決まっていて
何かを追加しても病院側の利益が減るだけなので
病院側は入院中、必要最低限の事だけをし
出来るだけ多くの利益を残さなければいけないという
変な制度です。
全ての手術がそうではなく
いくつかの手術だけが該当しているんですが
産婦人科で行う大抵の手術は『包括払い方式(DRG)』です。
『包括払い方式(DRG)』を適応している手術一覧↓
なのでこういう手術ばかりを行っている大学病院の産婦人科は正直ドケチです。
手術入院をした患者さんが入院ついでにMRIを撮りたいとか
家に帰ったら家事をしなければいけないからもう数日入院したいとか
色々要求してくるんですが
適当な理由をつけて全部お断りしています。
これが研修医の頃は結構ストレスでした。
今回、救急センターを通して卵管・卵巣膿瘍(卵管や卵巣に膿が溜まった状態)の患者さんが入院しました。
ミレーナを10年間外さなかったのが原因だと思います(ミレーナの使用期間は5年です)
卵管・卵巣膿瘍は癒着がとーーーーっても酷いので
ケースによっては癌の手術並みに大変で
誰も手術したがらない疾患です。
なので効果があれば抗生剤の治療だけで終わらせますが
今回の患者さんは抗生剤を使っても状態が悪くなる一方で
このままじゃ敗血症になって危いと判断し手術をする事にしました。
予想通り癒着がとんでもなく
開腹して先輩の産婦人科教授だけでなく、外科、泌尿外科の教授も巻き添えにして
4時間の大手術をしました。
ICUにも一日入院し様子を見ました。
手術後もバイタルや血液検査結果が期待ほど安定しないので
週末も心配で病院に向かったり
家でも電子チャートばかり確認したり
この患者さんが回復するまで
精気を吸い取られるような日々を過ごしていましたが
10日後位には無事全回復し退院しました。
ホッとしていた数時間後
保険審査の職員さんから衝撃の連絡がありました。
「先生。今日退院された患者さんDRGなので損益100万ウォンです。」
...................はぁ
手術しなかったら命が危なかった患者さんを
苦労して大手術をして
きちんと回復させて退院させたら
マイナス100万ウォン
DRGが医師にとって邪魔にしかならない制度なのは知ってましたが
何、このみたいな保険制度
別に大きな利益を望んでる訳ではないんです。
ただ使った分の材料費、薬代、人件費位は貰って当然なんじゃないんですか
この国は病院に借金しながら医療を振る舞えというんですかね
そうじゃなくても過酷な上、訴訟が多く、毎年不人気な産婦人科が
DRGのせいで儲けも少なくなり
今後誰が専攻するんでしょうか。
その内滅亡するんじゃないか心配です。
(とか言いながら産婦人科を専攻してるアイロニーな私)
100万ウォンが私の給料から抜かれる訳ではありませんが
私を雇ってくれてる病院に申し訳ないです
まだFellowを初めて2ヶ月しか経ってないのに
ブラックリストに入らないといいな…
半面、患者さんはこんだけ治療を受けて
簡単な手術代だけ払って退院したので
「韓国の医者は不親切」なのを除けば
治療や手術もすぐ受けられるし、安いし
医療に関しては本当に患者さん重視のいい国なんじゃないんでしょうか。
「こんな環境で働けるかー」とブチギレしながら
いつにも増して日本に帰りたくなったそんな出来事でした。
明日は『스승의 날(先生(師匠)の日)』だそうです。
(忘れてたー)
人生初めてこの日にプレゼントを貰いました
普通はカーネーションですが何故か私だけオレンジ色の花
「一目見て先生のイメージとピッタリでこの花を選んじゃいました」って
気持ちが嬉しいですね
愛嬌溢れる可愛い後輩ちゃん達、ありがとう
そしてあちこちの産婦人科病院で働いている
卒業生の先生方から教授達へお餅プレゼントの嵐が