劣化ウラン弾は永遠に…! | ヒロシマときどき放送部

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2016年広島で高校の教員を定年退職し現在は山奥のお寺の住職をしています。ヒロシマのこと、放送部顧問をしてきたことを書いてみます。

 昨日(2023.3.25)の朝日新聞(デジタル版)に劣化ウラン弾の記事が出ていたが、読んでみて「なんだこりゃ」だった。

 劣化ウランとは、天然ウランから原子力発電や核兵器に使われるウラン235を抽出した残りなのだが、朝日新聞によると「核分裂しやすいウラン235の濃度は低いが、わずかながら放射能を帯びている」という。

 しかし劣化ウランの99.8%を占めるウラン238は、核爆発は起きにくいものの、れっきとした放射性物質だ。その存在や危険性を無視していいのだろうか。

 1991年の湾岸戦争や2003年のイラク戦争でアメリカは劣化ウラン弾を使っている。当時アメリカ軍兵士の中から健康被害の訴えがあったが、大統領の諮問機関は「復員軍人の病気の原因が、劣化ウランにさらされたためだとは考えにくい」という報告書を出したと、今日の朝日は報じる。

 また2004年にイラクに派遣された自衛隊は、「日本における許容被曝線量よりも低い数値だったが、念のために、こうした地域を避けて活動した」とも伝える。そして派遣された自衛隊の幹部は朝日新聞の取材に対して、「飛び散った劣化ウランの粉じんを吸い込み、軽度の内部被曝を起こす可能性はある」と答えている。大したことはないということか。

 さらに外務省幹部の「劣化ウラン弾は核兵器とは全くの別物だ」という発言を紹介するなど、朝日の記事の論調はどうも劣化ウラン弾の放射能はほとんど心配ないということのようだ。

 ところがだ。ウラン238が放出するのはアルファ線。陽子2個中性子2個の原子核が飛び出す。飛ぶ距離は極めて短いがエネルギーは大きい。劣化ウラン弾が戦車の装甲を貫通すると高熱を発し、劣化ウランは微粒子となって飛散するが、それを吸い込んで内部被曝したら間違いなく危険だ。

 広島では「黒い雨」を浴び、後に肺や胃、大腸などに相次いでがんを患った女性の肺がんの組織を調べたところ、ウランが放出源とみられる放射線の痕跡が確認されている(「中国新聞」2021.1.3)。放射性物質がごくわずかでも体内に取り込まれると、内部被曝によって健康が脅かされて命を奪われることもあると分かったのだ。

 劣化ウラン弾が使われたイラクやクウェートでも白血病やがん、先天性の障害に苦しむ人が多いという報道を朝日新聞はこれまでしてこなかったのだろうか。

 まき散らされた劣化ウランの毒性はいつまでも残る。中国新聞のデータベースによると、2003年に国連環境計画(UNEP)が、1995年のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争でアメリカ軍などが使用した劣化ウラン弾によると見られる微量のウランを大気や地下水から検出した。また同じ2003年にIAEA(国際原子力機関)が、1991年の湾岸戦争の際にクウェートで使用された劣化ウラン弾の残がいから微量の放射線が検知されたと発表している。しかしそれで終わりではない。

 たとえ微量でも、放射線が検知されにくくても、ウラン238はいつまでも残る。ウラン238の半減期は44億6800万年。永遠と言ってもいい。それが今度はウクライナの大地を汚染するかもしれないのだ。まき散らされたら、おそらく回収は不可能だろう。

 目に見えない恐怖には目をつぶれ、とでもいうのだろうか。