【第3回】晴嵐――海中から飛び立つ“最後の切り札”

伊400型潜水艦の心臓部、それが専用の特殊攻撃機――**「晴嵐(せいらん)」**です。
通常の艦載機では不可能だった、「潜水艦から発進する航空機」という前代未聞の任務に対応するために開発された、まさに“空飛ぶ秘密兵器”でした。


◆ 晴嵐とはどんな機体か?

晴嵐は、川西航空機が開発した水上偵察・攻撃機です。
特徴は、折りたたみ機構小型化設計により、潜水艦内の格納庫に収まるようになっている点。
以下が主なスペックです:

項目 内容
全長 約10.6m
翼幅 約12.2m(展開時)
最大速度 約475km/h
武装 800kg爆弾1発または魚雷1本
特徴 折りたたみ機構付き、水上機型

たたんだ状態で潜水艦に格納され、発進直前にデッキ上で組み立て・整備。
15分ほどでカタパルト発進し、夜間飛行・奇襲攻撃を行うという構想でした。


◆ 実戦には間に合わず

晴嵐は18機が製造され、伊400型潜水艦に3機ずつ搭載される計画でした。
しかし、実際の作戦(ウルシー環礁攻撃)は日本の降伏により中止となり、晴嵐が発進することは一度もありませんでした

戦後、晴嵐はアメリカ軍に回収され、一部は調査用に持ち帰られたものの、やがてその姿は海の記憶へと沈んでいきます。


◆ 最後の空母が、海の底から飛ばした夢

伊400型と晴嵐は、「空母がもはや守れない」という現実に対して、
“見えない空母”という最後の夢を体現した存在でした。

実戦投入されなかったがゆえに、今もなお**「もし使われていたら…」**という想像をかき立てる兵器でもあります。


■ 次回予告

次なるテーマは――“空を飛ぶ船”の逆転劇
【飛行艇 × 戦場】をテーマに、海から空へ飛び立った“もう一つの水上戦力”をご紹介します!

どうぞお楽しみに!