犯人「おい!お前!今すぐ、そこのダンベルを20回上げろ!さもなければこの女を殺す!」


彼女「助けて!あたしまだ死にたくないよ!」


犯人は僕の彼女に拳銃を突きつけている。


まずい。


まずすぎる。


危機的状況ってやつだ。


僕「こ、こんな重いダンベル20回も上げられるわけないだろ!無茶だ!何も言わず彼女を離せ!」


犯人「うるせえ!要求を飲まないなら今すぐ殺す!
ハッハッハ。
哀れだな姉ちゃん?こんな貧弱な彼氏でよ?」


僕「ま、待て!わかった。要求通りダンベルを20回上げる!ただし、成功したら彼女を解放しろ!わかったな?」


犯人「ふふふ。そう来なくっちゃな。さあ上げてもらおうか。貧弱彼氏さんよ?」


ダンベルを握る。


重い。


何て重いんだ。


しかしこの鉄の塊を20回持ち上げなければ、俺は愛する人を失うことになる。


嫌だ。


そんなの絶対に嫌だ。


必ず持ち上げなければ…。


1…2…3…4…5…6…7…8


…9





犯人「どうした?まだ半分もいってないぞ!このまま彼女を見殺しにするのか?」


僕「く、くそ!」


10…11…12…13…14…15…16…


17…18…





ピキッ!


上腕二頭筋が悲鳴をあげている…。


彼女「もういいよ!R!十分頑張ったよ。あたしは大丈夫。Rのことはずっと忘れない。今までありがとう。」


僕「ば、馬鹿なこと言うな!必ず上げてお前を助ける!だからお前とはこれからもずっと一緒だ!」

19!


20!


僕「要求通り上げたぞ!今すぐ彼女を…」


犯人「あと5回だ。」


僕「な…!?」


犯人「あと5回だと言ったんだ。このままじゃつまらんだろ?」


僕「約束が違うぞ!」


犯人「ほぉ~?彼女がどうなってもいいのか?クックック…」


僕「わかった!あと5回だな!」


21!


22!


23!


24!





くそっ!


上がらない!


俺の二の腕はすでに乳酸に支配されている…


だがあと一回上げなければ彼女は…


限界を超える。


いつかファンキー野郎が言っていた。


きっとこのことを言うんだな。


俺は超えてみせるよ。


限界を。



…25!


犯人「あと5回だ。」


僕「な、なにぃぃ!?」


彼女「Rー!」


…筋トレにはドラマが必要だ。