昨日、心療内科で医師に「最近は何か変わったことありましたか?」と訊かれた。

男の娘のポコチンを咥えたんでフェラの難しさを知りましたよ!と答えようかと思ったけれど、やめた。バカバカしい。

「いえ、特にありません」と答えると、医師は「そうですか」と頷いた。「今はお仕事を退職されてストレスが減っている時期だと思いますが、油断はしないでください。しばらくすると、他のストレスが必ず出てきます。気持ちが落ち込むかもしれませんが、悲観的にならず、ちょっとでも何かあればすぐに相談してください」

また自殺したくなりますか、と訊こうかと思ったけれど、やめた。そもそも自殺に関して、この医師には何ひとつ話していないのだ。余計なことを話して妙な薬を出されるのはごめんだ。


会計を終えた後、駐輪場の前のベンチに座ってぼんやりした。ふと思い立ち、矢井田瞳の「Ring my bell」を聴いた。


学生の頃、講義をサボって彼女と町田のラブホ街でどこに入ろうか迷っていると、彼女が「あそこにしよう」と指差した。そこは「Ring my bell」という名前のホテルだった。

「ヤイコの曲だな」と俺が言うと、彼女は「知らない。聴いたことない」と言った。


そのホテルに入り、セックスをして、ふたりで風呂に浸かりながら、「なんでこのホテルに入ろうと思ったの?」と彼女に訊ねた。

彼女は「ホテルの名前が気に入ったから」と言った。

「Ring my bellって名前が?」

「そう。Ring my bell。私の心のベルを鳴らしてくれるのはあなただけ、みたいな意味なのかなぁ、と思って。それって素敵だと思わない?」

「そうかな?そんなロマンティックな意味じゃない気がするけど」

「君はわたしと一緒にいても心のベルが鳴らないの?」

「鳴るよ」と俺は言った。「うるさいぐらい鳴り響いて迷惑してる」

「じゃあ、鳴りやませてあげる」

彼女は俺にキスをして、「お風呂でエッチしようか」と言って笑った。


後日、矢井田瞳の「Ring my bell」が入ったアルバムを彼女に貸した。その日の夜、彼女からメールが来た。「良い曲だね。わたしもこのCD買うよ」。


やれやれ。心療内科に行くと、こういう余計なことを思い出してしまう。思い出したくないのに。