太郎が竜宮城を辞去するとき、
乙姫は彼に玉手箱を渡しました。
「大きい玉手箱と小さい玉手箱、どちらになさいますか」
「それでは、小さい玉手箱をください」
誠実な太郎は小さいほうを受け取りました。
・・・
太郎が故郷の浜に戻ると百年が過ぎており、
だれひとり知る者はありません。
かつて暮らしていた苫屋は古びてはいましたが
ありました。
苫屋から煙があがっています。
なかでは老夫婦がふたりで食事をしていました。
優しい太郎は彼らに、「そこはわしの家だぞ」
と言うこともできません。
(このイラストは 「 海の素材屋 」 様からお借りしました)
